わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『裸の大将一代記 山下清の見た夢』(小沢信男著、ちくま文庫電子書籍)

2021年5月18日

 

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3日前の5月15日の朝日新聞の読書欄を見ていたら、何とたった今私が感動しながら読んでいる小沢信男著『裸の大将一代記』の書評が出ていました。書いたのは評論家の津野海太郎さん。そう言えば、私は津野さんの著書『読書と日本人』も好きで、続けて2度読み返しました。

 

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この朝日新聞の読書欄では、最近亡くなった小沢信男さんを追悼するかたちで、津野さんが小沢信男著の『裸の大将一代記 山下清の見た夢』、『東京骨灰紀行』、『俳句世がたり』の3冊を紹介していました。ああ、やはりこの二人にはお互いに深く心の通じるところがあったんだ、と書評を読んでいて納得。


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『裸の大将一代記』は小沢信男さんの代表作ということで、いつか読んでみたいと思っていました。アマゾンでさがしたところ、電子書籍で読めることが分かったので読んでいたところでした。文中では戦中・戦後の東京や日本全国を舞台に、知的障害をもつ画家山下清の放浪の旅が描かれます。小沢さんも山下清もほぼ同年代で同じ東京下町生まれ(小沢さんは山下清の5歳年下)。山下清の生活を追う形で、小沢さんの当時の自分の生活や戦後日本への思いも描かれています。

 

序章 山下清という現象

第1部 八幡学園 — 戦中

第2部 天皇とルンペン — 戦後

第3部 裸の大将 — 戦後の後

終章 山下清という課題

あとがき

 

これが本書の全体の構成です。

今はもう山下清という画家を知らない人もいるかもしれません。山下清(1922〜1971)。もし生きていたらもうすぐ100歳です。

 

山下清: 知恵遅れのために小学校でいじめられたが、養護施設の八幡(やわた)学園に入ってから始めた貼り絵で特異な才能を認められる。全国各地で貼り絵の個展が開催され、「長岡の花火」などの作品が有名。「日本のゴッホ」と賞されて国民的人気画家となった。しかし、学園を何度も脱走し、日本各地の放浪を繰り返す。日本中を旅した放浪の旅が映画やテレビドラマになり、これがまた人気を高めた。

 

著者の小沢さん、独特の語り口です。山下清のことをよく調べています。同時代に生きた東京人として、山下清のことが好きで、その生き様がとことん気になったんでしょう。新型コロナ禍で自由に旅に出かけられず好きなスケッチが出来ない私達風景画愛好家にとっては、本当にうらやましい自由気ままな放浪の旅です。これは絵に生きた山下清という人の人生の記録であると同時に、東京や関東を中心に描いた小沢流の日本戦後史・歴史紀行でもあります。