わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんな本読んだことありますか? 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子著、新潮文庫)

2021年1月12日

 

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昨年読んだ本の中で、この冬もう一度ゆっくり読み直したいのが本著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』です。50年以上前に受けた高校日本史の授業では日本近代史を学ぶ機会はありませんでした。今の高校でも似たような状況でしょう。そんな時に手軽に読める歴史の解説書は貴重です。

 

タイトルを見た時、この本は著者の歴史観に基づいて反戦平和を訴える内容だろうと単純に予想しました。しかし実際には、明治以来、日本が経験した日清・日露戦争、第一次・第二次世界大戦(太平洋戦争)の歴史を、専門的立場から分かりやすく解説した日本近代史の入門書でした。歴史上重要な人物の写真や地図などのイラストが見やすいスタイルで本文中に挿入されています。

 

本書がユニークなのは、中学高校生への集中講義を再録した形になっている点です。若い人たちに混じって自分も教室で先生の話を聞いているような、そんな講義の臨場感も味わえます。もともとは東大文学部の専門講義・大学院講義の内容です。

 

昨年本書を読んだ後、菅内閣の学術会議会員任命拒否が起きました。その任命を拒否された6人の中に本書の著者加藤陽子さんも含まれていました。政府がなぜ任命拒否したのか、その理由を政府は今だに語ろうとしません。なぜだろう、その理由を知りたい、と感じる人が多いのか、インターネット(カーリル)で図書館の貸出状況を調べると、本書は東京都の全ての図書館、そして全国の多くの図書館で貸出中でした。菅総理は、国会で「任命拒否した6人の著作を全てお読みになったのか」の質問に答えて、加藤陽子さんの著作以外は読んでいないと答えました。恐らく総理はこの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』はお読みになったのでしょう。小林秀雄賞受賞作で、新潮文庫でも「新潮文庫の100冊」に選ばれていて、一般に注目度が高い作品です。

 

日本の近代史は、若者も高齢者も必ず学ばなければならないものです。私がこれまで読んできた一般書の中では、本書と、『昭和史』、『昭和史戦後編』(いづれ半藤一利著、平凡社)が最も印象に残りました。

 

 

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私は、戦争そのものに勿論反対ですが、過去の戦時中の政府や軍部の見通しの甘さからくる戦略の失敗が、今の「対コロナの戦い」の中での政府の対応でも同じように繰り返されるのではないかと心配します。医療現場は今まさに戦場です。国の戦略が間違うと、そのツケはまず医療現場に、そして結局は全て弱い立場の国民にきます。対コロナ戦略に失敗は許されません。戦略の重要性を再認識する本が、この本です。