わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「昭和史」(半藤一利著、平凡社)

2016年9月9日
 

毎年8月になると、終戦記念日前後にいろいろと考えることがあります。これまで昭和史をきちんと勉強して来なかったことが、いつも頭の隅にあって、しかし、普段は自分で勉強するほどまとまった時間がなく、結局何もしないで、今まで来ました。退職して比較的時間ができた今、「やっぱりこれは読んでおかなきゃ」と思って、半藤一利さんの「昭和史」を読みました。全部で510ページの本ですが、まさに小説のように2日ほどですらすらと読めました。そして、内容もよく分かりました。「ああ、これが昭和の日本の戦争の歴史なんだ」と非常に納得がいきました。まさに名著だと思います。



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明治維新(1868年)から40年、日清戦争日露戦争を経て近代国家に作り上げた大日本帝国を、次の40年後の1945年には太平洋戦争の敗戦で滅ぼしてしまう。その歴史が、第一章から第十五章にわたって、戦争の遂行に関わった多くの人物についてのリアリティ溢れる解説とともに、わかりやすく述べられています。

 

最終章の最後に近いページで半藤さんが述べられていることを、「まとめ」として引用します。

 

「昭和史全体を見てきて結論としてひとことで言えば、日本をリードしてきた人びとは、なんと根拠なき自己過信に陥っていたことか、ということでしょうか。こんなことを言っても喧嘩(けんか)すぎての棒ちぎれ、仕方のない話なのですが、あらゆることを見れば見るほど、なんとどこにも根拠がないのに『大丈夫、勝てる』だの『大丈夫、アメリカは合意する』だのということを繰り返してきました。そして、その結果まずくいった時の底知れぬ無責任です」

 

これ、現在でも、例えば福島の原発廃炉の見通し、福島の人たちの生活保証、地震や火山活動が頻発する中での原発再稼動、日本の借金だらけの財政の問題、急速な高齢化と少子化、女性の育児と働く環境の整備の遅れ、経済格差の拡大と貧困家庭の増加など、日本が抱える全ての問題に当てはまる気がします。政府の自信たっぷりの説明で「大丈夫」と思い込まされ、もしそれが破綻した時には、誰も責任を取らない、このような、まさに底知れぬ政治の無責任がまた繰り返されるかもしれません。日本人には昭和史から学ばなければならないことが沢山あると痛感させられます。