わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんな本読んだことありますか? 「なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか パンと日本人の150年」 (阿古真理著、NHK出版新書)

2017年6月7日


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誰でも読みたくなる大好きなパンの話です。第1章「日本人はパンが好き?」、第2章「歴史を変えたパン焼き人たち」、第3章「カレーパンは丼である」、第4章「西洋のパン食文化」、第5章「フランスパン時代の幕開け」、第6章「ホームメイドのパン」、そして第7章「私たちの主食文化」。パンを視点にした近代・現代の日本の食文化とその歴史を扱っているのですが、著者の阿古真理さんの取材力、そしてパンに関する知識の豊富さに驚かされます。パンを通して見る江戸時代末期から現代に至る日本人の生活史といっていいかもしれません。最近、美味しいパンを売る店が増えているのを地方にいても感じます。今は特にバゲットなど表面の硬いフランスパンが好まれているそうですが、なぜ日本のパン、特にフランスパンがこんなにも美味しくなったのか、が分かりやすく書かれていて、とても勉強になります。

 

特に第2章は私にとってとても興味深く、勉強になりました。ここに出てくるパン屋さんの名前もよく知っているものが多くて、なるほどこんな風にして日本のパン屋さんが大きく発展していったのだというのがよく分かります。銀座木村屋、神戸のフロインドリーブ、敷島製パン(パスコ)、タカキベーカリーアンデルセン山崎製パン神戸屋新宿中村屋、ドンクなどなど、おなじみのパン屋さんの名前が出てきます。そして第4章も面白い。世界史の中でパンが果たした役割に、思わず「ああそうなんだ」と納得します。このあたりの文章の説得力はなかなかのものです。著者の勉強ぶりがよくわかります。そして第6章の「ホームメイドのパン」。もうこの辺りで、パンに対する思いが頂点に達します。「美味しいパンを食べたい」、「表面の硬いフランスパンを買って食べ比べをしたい」という思いと、さらに「美味しいパンを自分でも作って見たい」という気持ちが大きくなります。

 

そして最後の7章。ここで著者は「美味しい美味しいだけではだめ」とぴしゃりと締めくくりの言葉を述べています。以下に本文のまま引用します。

 

 『長い平和を謳歌しながらこぞって食に関心を持ち続けた結果、日本は世界に冠たるグルメ大国になった。都会の中ではもちろんのこと、地方でもおいしいと評判が立つ店には、不便でも遠くても、何時間もかけて人々が押し寄せ行列をつくる。どこに行ってもおいしいご飯にありつける。食事の量があるのは前提で、質を選べる豊かな国に、日本はなった。

 しかし、一方でそれはお金があれば、という前提条件がつく。経済の急成長が期待できなくなった中で政治がさらに格差を拡大させた結果、深刻になった貧困率の高さは、飢餓がすぐそばにある実態を気づかせる。そのうえ経済がグローバル化した現代において、国ができることも縮小する一方だ。(中略)

 消費を煽る情報があふれかえる現在、無防備に立ち向かえば欲望の海に溺れてしまう。そんな時代だからこそ、私たちは食欲への自制心を働かせることが必要である。そして関心を食の背後に向け、社会を変えていくことができるはずである。』

 
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この本の影響がとても大きかったのでしょう。私はとうとう先月からパン作りを習いに行くことになりました。先月最初に作ったのがイングリッシュ・マフィン。そしてこれを今週復習して自宅でも焼いてみました。とても簡単に美味しいパンが出来て満足しました。もうすぐフランスパンにも挑戦します。フランスパンのレシピーを見ると、高価なバターを使わず、小麦粉の香ばしい香りを楽しむシンプルなパンです。日本食ではご飯と美味しい味噌汁が基本であるように、パン食ではこのフランスパンがパンの基本で、これが食の満足、つまり人間の幸福感の基本になって、これからも人間生活を支えていくのでしょう。そのフランスパンが日本でどんどん美味しくなって、外国人が激賞するぐらいレベルが上がっていると聞くと、パン好きとしてはとてもうれしくなります。