わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『日日是好日—「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(森下典子著、新潮文庫)

2022年9月24日

 

 

著者が大学生の頃から25年間続けてきた週1回のお茶のお稽古。その25年の経験から学んだことを、素直な文章で読者に語っている。私自身はお茶を知らない。数年前に近所の方から自宅での茶会に誘われたことがある。まだ新型コロナが流行する前だ。ちょっと迷ったが、柄でもないと思ってお断りした。もしあの時その茶会に行っていたら、今頃は少しは茶道のことが分かっていたかもしれない。本書を読みながら、ずっとその近所の方の顔が頭から離れなかった。

 

本書を読みながら、お茶というのはある意味最近私が始めた俳句の世界に近いと思った。日本の四季の変化にとても敏感になる。花や鳥やその他の自然の姿に関心が深くなる。と同時に、古来からの日本の伝統文化にも否応なしに惹きつけられる。

 

世の中の政治や社会や経済がどうであっても、それには左右されない心の態度というか心の持ちようというか、そんなものが茶道でも俳句でも養われるような気がする。そして、いろいろ悩みながらも長く続けることによって、いつかはっとするような思いがけない世界が目の前に開け、新たなしみじみとした境地に至る。茶道や俳句とはそんなもののような気がする。

 

本書では「お茶」が教えてくれた15のしあわせが15章に渡って書かれている。例えば、第一章「自分は何も知らない」ということを知る。第二章 頭で考えようとしないこと。第三章「今」に気持ちを集中すること。これらひとつひとつの言葉が、著者がお茶から学んだことだ。それらのメッセージの一つひとつが、読者に大きな共感を呼び起こす。

 

私は将来も「お茶」をすることは無いとは思う。しかしできれば俳句の世界で、この著者と同じような経験をしてみたいと思いながら、本書を読み終えた。

 

今日の俳句

「めっきりと芒(すすき)の減りし荒れ野かな」

 

秋になったので芒を季語に1句詠みたいと外へ出るが、最近は芒が少ない。他の雑草との競争に負けたり、農薬の影響があったりで、芒を取り巻く環境も大きく様変わりしている。