わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『俳句写真集 続・四季を楽しむ』(酒井正樹著、リーブル出版)

2022年5月29日

 

 

俳句写真集というのは普段あまりお目にかからない。しかも生物学者が著したこの種の本はとても珍しいはずだ。著者の酒井正樹さんは、実は私の職場(大学)の同僚だった。若い頃から写真の腕前は大学内で評判だった。学内の写真コンクールで度々入賞されていたと記憶する。そして退職後、その写真の力をまとまった形で最初に披露されたのが、2015年初版の『俳句写真集 四季を楽しむ』(全198ページ) だった。専門の神経行動学から離れた趣味の世界でも実力を発揮され、読者を楽しませた。本書(2022年刊、全228ページ)はその続編になる。

 

前書でも書かれていたが、撮影に使ったのはもっぱらCanon IXYという小型デジタルカメラだ。デジカメでこんな写真が撮れるんだ!というのが最初の率直な驚き。酒井さんの影響で、私もいつもデジカメかスマホで写真を撮っている。

 

俳句もいい。写真を見て、その横に書かれた俳句にしばらく意識が立ち止まる。その俳句の英訳も載せられているが、私にとってはこれも興味深い。私は酒井さんの文章の才も大学勤務時代によく知っていた。英語もうまく、学部(理学部)の英語教育にも熱心だった。独特の教育と研究スタイルで、学生たちの間では大学のいわば「名物教授」のように見られ人気だった。酒井さんは若い頃、単身ニューヨークで研究されていた奥さんを病気で亡くされた。その悲しみと奥さんの思い出がいまだに俳句の所々に滲んでいる気がする。

 

本書の写真には生物学者の視点からみた専門的な短い解説も添えられている。もう80歳近いご年齢と思うが、とにかくバイタリティがすごい。まったくエネルギーが枯れていない。私は、大学退職後は専門から完全に離れて、趣味の水彩画の世界で生きているが、酒井さんは専門からリタイアしていない。むしろ興味を広げつつ自分独自の世界を切り開いている。

 

酒井さんのかつての研究室の壁面の本棚には、端から端まで床から天井まで、あふれるほどの多種多様な本が並んでいて、部屋に入ると圧倒されたものだ。その本のことを思い出しながら、この先輩にはこれからも負けずについていかなければ、という思いを強くした。