わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『英語独習法』(今井むつみ著、岩波新書)

2021年10月21日

 

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今コロナ禍で独学を余儀なくされている大学生や社会人だけでなく、我々のような高齢者を含めた全ての人が、自分で英語を学ぶ上での様々なヒントを得られる本です。学校での英語学習は現在、小学校からスタートし、中学・高校と10年近くに及びます。その間、先生の指導で英語の一応の基礎が身につきます。一人で英語を学ぶというのは大学に入った時期ぐらいから本格化し、人によっては定年で仕事を終えるまで、職種に応じて専門分野の英語を中心に、実に延々とこの学習が続きます。更に高齢者になっても死ぬまで英語を勉強し続ける人はかなりの数にのぼるでしょう。この間、人生の膨大な時間を英語学習に費やすことになります。

 

本書の第1章で著者は読書に問いかけます。「あなたの英語学習の目標は何ですか?」、「目標のレベルはどのあたりですか?」

そして、初めから厳しいアドバイスが待っています。(以下本文から抜粋)

 

「残念ながら、日本語母語話者が簡単に、片手間の勉強で、プロフェッショナルレベルの英語を習得することは無理である。」

 

「英語学習を始める第一歩は、自分が必要な英語はどのようなレベルなのか — つまり英語学習で達成したい目標 — を考え、自分はその目標達成のためにどこまで時間と労力を使う覚悟があるかを考えることだろう。」

 

このアドバイスには、私自身も共感できます。一方、私は英語との関わりは人生の各ステージでかなり多様に変化することも経験しました。高校生までは入試科目として英語を勉強します。大学に入ると、今や教科書が(特に理系の場合)英語で書かれているか、またはその翻訳書である場合が多いので、2年生ぐらいから専門分野の英語を勉強します。大学を卒業して大学院に行った場合も同じです。この間、外国映画を見たり、英語のニュースや新聞を目にする機会が増え、また海外旅行に行く機会もあったりして、自分の専門分野以外の英語にも目が向きます。社会人になると、英語への接し方は人によって実に多様です。そして英語の言語としての魅力にも引き込まれたりもします。

 

このような英語への接し方の変化に応じて、自分の英語の目標もどんどん変わります。結局、70歳を越えた今になって思うのは、いずれにしても英語学習はエンドレスだということ(国語と同じです)。自分の能力や時間や関心に応じて、自由にいろいろなやり方をためしてみたらいいと思うのです。いろいろ失敗を重ねながらも、フレキシブルに。大事なのは、英語学習を途中で止めないで続けることです。

 

今、私は退職後の暇にまかせて、自分が中学・高校時代に習った基本的英単語を、辞書を見ながら振り返り、学んだことをブログに書いています。英語の辞書(英和、和英、英英辞典)をじっくり「読む」というのは、やはり時間のゆとりがないと出来ないことです。この作業(自分では「作業」とは思わず、一種の「遊び」と思っていますが)で、英語の言葉としても面白さを感じますし、そんな喜びを読者に提供してくれる辞書編集者の仕事に畏敬の念をおぼえます。

 

私にとって本書を読んでの一番の収穫は、第5章、第6章に紹介されていたコーパスWordNetなどのオンライン・ツールの情報でした。このツールはこれまで使ったことがなかったのですが、とても素晴らしいものです。著者がこれらのツールの使い方を初心者向けに丁寧に解説してくださったことに感謝します。特に私のような英語の単語に関心がある者にはとても有り難いツールです。

 

全体を通して、著者の専門の認知科学の研究の雰囲気が本書の随所に感じられ、その研究の成果が英語学習を考える上でも説得力のある説明となっています。著者の提案する英語学習の様々なアイデアは、どれも共感できるものばかりでした。