わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか?  『絶望の隣は希望です!』(やなせたかし著、小学館)

2020年2月13日

 

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一体いつ頃からこの本が私の本棚にあったのか、いつ購入したのか、はっきり記憶にありません。多分家内がずいぶん以前に買って本棚に置いておいたのでしょう。中をパラパラと部分的に読んで、そのままにしていました。テレビでコロナウイルス感染症のニュースが日本中を駆け巡って何かおちつかない朝、ひょいっと本棚に手を伸ばすと、この本に行き当たりました。「絶望の隣は希望です!」。日本中でウイルスへの感染不安がまん延する中で、自然に心が救いを求めたのかもしれません。

 

やなせたかしさん。「アンパンマン」を描いた漫画家です。94歳で亡くなられて、すでに6年余りになります。この本は2011年初版発行なので、もう8、9年前の本になります。中身は、絵や漫画がほとんど描かれてなくて文章だけの本。しかしとても興味を引く内容です。自分の生い立ち(誕生、少年時代、家族のこと、東京での学生時代)、軍隊での戦争体験、結婚、戦後の貧乏生活と売れない漫画家時代、40代〜50代の絶望の長いトンネル時代、そしてその後の突然の「アンパンマン」のブレーク。奥さんとの死別。自分を飾らない素直な文章で書かれた自伝で、また自分の強いメーセージを後の世代に伝えるための本です。250ページの著作で、とてもよい文章。そして内容が面白く、一気に読めます。若い頃、井伏鱒二や井伏の弟子の太宰治の文章に感化されたというやなせさん。文章家です。肩書も、漫画家だけでなく、詩人、絵本作家、作詞・作曲家、編集者と多彩です。

 

本の中にアンダーラインを引きたい箇所はいたるところにあります。94歳まで生きた人生の大先輩の言葉は、つねに「ユーモア」と「希望」に満ちています。見習わないといけないですね。「人生、諦めさえしなければ何とかなる」。それがこの本の底を流れる大きなメッセージです。

 

本の最終ページ近くにのっていた詩を引用します。

 

『晩年』

老年ボケやすく

学ほとんど成らず

トンチンカンな人生

終幕の未来も

なんだかヤバイ

それでも笑って

ま、いいとするか

(自著『たそがれ詩集』より)

 

アンパンマン」と「やなせたかし」さんについては、神戸港のスケッチの時にも記事を書いていますので、それもご参照ください。

 

yaswatercolor.hatenablog.com