わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか?  『ちび竜(りゅう)』(文・工藤直子、絵・あべ弘士、童心社)

2020年2月9日

 

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朝日新聞の1月25日読書欄「子どもの本棚」のコーナーに紹介されていました。絵本評論家・作家の広松由希子さんの紹介文「ボウフラから銀河まで」にひかれて早速購入しました。

 

最初のページは

「ちいさな つぶから うまれたよ。

 ちいさな ちいさな ちび竜(りゅう)だよ。」

とやさしい説明から入ります。小さな泡と同じサイズの小さなちび竜が描かれています。水たまりの中で、ボウフラに見守られながら生まれたようです。

 

そして水たまりから飛び立って、たんぽぽの綿毛に乗って空に舞い上がります。

たんぽぽの白い綿毛の描写や、空から眺めた大地の風景の描写が見事です。黒を主体にした木版画のような画面。伸びやかな自由な線が印象的です。

 

トンボ、鳥、魚、そのほかの動物が登場して、どんどんちび竜を取り巻く世界が広がり、その中でちび竜は一人前の大きな竜に成長していきます。

 

最後に近いページでは、

「みえないほどの チビチビから うちゅうを つつむ デカデカまで

 ああ どんな すがたも ぼくである。どんな しごとも ぼくは やる。」

と自信に溢れたちび竜が描かれています。

 

この絵本を読む子どもたちに、生物は多様なこと、どんな生物も地球の上で協調して生きていること、どんな小さな生き物でも大きく成長できること、などを教えてくれます。そして次に、また、ちび竜の子どもが誕生して、命が次々とつながることも暗示しています。

 

作者の工藤直子さんは1935年生まれ。詩人・童話作家として活躍しています。あべ弘士さんは1948年生まれ。旭山動物園飼育係として25年勤務の後、絵本作家となりました。この人の絵には、長年動物を見てきた観察眼が生きているとおもいます。そして表現が自由でダイナミックです。全体の動きをとらえて細部にこだわらないところは、きっと子どもたちの共感をよぶことでしょう。