わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『つかまえた』(田島征三著、偕成社)

2020年10月15日

 

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NHKEテレ日曜美術館」で田島征三さんの特集を見ました。1940年生まれの絵本作家です。その中で紹介されていた最新の絵本『つかまえた』を読みました。読んだというより、絵をながめたというのが正しいと思います。NHKの番組の中で田島さんが、「絵かきは上手くなったらおしまいだ」と言われたのがとても印象に残りました。そして「長く絵を描いていて、上手くならない、というのは難しいよ」とも言っておられました。

 

田島さんの絵は、筆の勢いで描いたエネルギーあふれる絵です。子供の描く絵のような雰囲気がありますが、よく眺めると、原色に近い絵の具を画面に勢いよく塗りつける動きのある筆のタッチと、塗り残した白い部分の静けさとのバランスが、とてもうまく取れていると思います。絵本のストーリーもシンプルです。自然賛歌、生命賛歌です。読んだ子どもも大人も、作者のメッセージをすぐに理解できるでしょう。子供の心に寄り添った絵と文です。

 

私は最近はほぼ毎日、インスタグラムで世界中のプロとアマチュア作家の絵を見ています。どの絵も完成されていてとても上手い!しかし、心にわっと突き刺さる絵は意外と少ないです。1日何十と作品を見ていて、「この絵、凄いなあ」と思うのは3つ4つでしょうか。技術的に上手いのはよく分かるのですが、多くがなぜか心に訴えない。みんな同じに見えるときがあります。例えば20人ほどの絵を「お気に入り」に登録していて、何度も繰り返し見ているのですが、似たような絵がとても多くて、いつまでたっても誰の絵なのか区別がつかないのです。特にうまい絵はそうです。一見下手に見えても、とても印象に残る絵が時々あります。そういう絵は、自分のやり方で描いています。絵が面白いです。モチーフも、構図も、色も、線の流れも、他の人とはっきり違います。見た瞬間、あっ、あの人の絵だ、とすぐに分かります。つまり個性が光っています。

 

そういう私も趣味で描いた絵をインスタグラムに出しています。もう400枚を越しました。心構えとしては、人の真似にならないように、自分のオリジナルな絵を描きたい、と思っています。線描きは殆ど誰もやらない筆ペンでやります。画面は2枚続きの広い画面が多いです。いつも現場で2、3時間で描き上げます。現場の臨場感が欲しいからです。しかし、こんな絵でも、他の人から見ると下手だし、なかなかはハッキリとした個性が感じられないかもしれません。そんな時、田島さんの言葉「絵かきはうまくなったらおしまいだ」には、大きな力をもらいます。今の自分の絵の下手さ加減を武器にして、自分流で描き続けることが大事なんだろう、と理解しています。時々、外国の方から、「あなたの絵は他の絵とは違う。オリジナルだ。頑張れ」というメッセージをもらうと、お世辞とは分かっていても思わず嬉しくなります。