わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

アンパンマンも きっとびっくり 潜水艦 (兵庫県神戸市中央区 神戸港)

2018年3月
 
3日前に続いて今日はグループ(木曜スケッチ会)で再び神戸に来ました。昨日までの雨を引きずって神戸はすっきりしない空模様で、しかも気温が上がらずかなり肌寒かったのですが、それでも参加した10人がおもいおもいの場所でスケッチしました。私が描いたのは港の中にある川崎重工の造船所です。

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この川崎重工の造船所は神戸ハーバーランドと目と鼻の先にあります。神戸港の岸壁は広い遊歩道になっていますが、そこを歩くとすぐに造船所が目に入ります。そこに黒い潜水艦がとまっていました。海上自衛隊の潜水艦です。実は前回ここに来た時に潜水艦がいるのを見て、えーとびっくりしたのですが、今日もいました。目をすこし遠くにやるとそこには自衛艦も・・・・。なかなか自衛隊の艦船をスケッチすることはないので、今日のスケッチはこれに決めました。
 
描き始めるとすぐに、前回この場所に来た時に話しかけてこられた年配の女性が犬を連れて再び絵を見に来られました。そして今回は自分のはがき絵をたくさん持ってきておられて私に見て欲しいと言われるので、スケッチを中断して見せてもらいました。写真をもとにして描いた風景画が中心で、しっかりと色がついた力強い絵でした。そうするうちに、今度は小学校の1年生の男の子が私のまわりを自転車でぐるぐる回り始め、時々絵の前で止まって話しかけてきました。算数が好きだそうで、1年生なのに九九を大きな声で唱えながらぐるぐる自転車をこぎます。ときどき間違うので、直してやると、私に気を許してまた話しかけてきます。神戸の国際学校の小学校にかよっているのだそうです。子供用の腕時計をしていて、「あと1分で描ける?」と聞くので、「あと1時間ぐらいはかかるよ」と返事。「One hourか・・・」というので、びっくりして「君、英語も勉強してるんだね?」と聞くと、「うん、やってるよ」という返事でした。「じゃあ、分は英語で何というの?」と試しに私から質問。すると、すばらしくいい発音で「minute!」と彼。「じゃあ秒は?」「second!」。このあたりから私のびっくり度がドンドン増します。あとは自分で勝手に「month !」「year !」と続けて、次は数字。Ten, hundred, thousandと、とてもいい発音です。感心していると、次に彼から私に質問が来ました。「1万は英語で何というででしょう」。私が「Ten thousand」と答えると「当たり!」と返事がきました。私もやる気になって、「How are you today?」と彼に聞いてみました。すると、「僕はそのような質問には答えません」と自転車に乗ってまたぐるぐるまわり始めました。多分彼の小学校ではこんな日常会話は当たり前すぎて、今更真面目に答える気がしないのでしょう。まさにそんな顔つきでした。

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私が潜水艦を黒で塗っていると、私のパレットを見て、どうしてあの船はあんな黒い色をしているの?と聞きます。さすがにまだ1年生の子供です。難しいことは分からないのでしょう。「あの船は戦争をする船だから、敵に見つけられないようにあんな黒い色になっているんだよ」と説明してあげました。この子達には「戦争」も「敵」も分からないはずです。このまま分からないままでいて欲しい。ずっと戦争のない平和な世の中であって欲しいと思います。このぐらいの年齢の子供だと、多分自衛艦より神戸ハーバーランドの「神戸アンパンマンこどもミュージアム」の方に興味があると思います。
 
アンパンマンは漫画家故やなせたかしさんの作品です。やなせたかし著「絶望の隣は希望です!」(小学館)を読むと、やなせさんは東京工芸学校を卒業後に太平洋戦争で陸軍に徴兵され中国に派遣されました。中国大陸で1000キロの「死の行軍」も経験して終戦。上海から復員船で佐世保に帰りました。やなせさんの弟は京都帝大法科の学生でしたが、海軍に志願し、回天特攻隊に入隊。戦地へ赴く途中で、フィリピンのバーシー海峡で輸送船ごと撃沈され死亡しました。
 
やなせさんは、戦中・戦後の混乱の中で、一体世の中の正義とは何だろう、と考え続けました。その結果、時代が変わっても世の中がどんな状態になっても変わらない正義は「ひもじい人を助けること」だという結論に達します。「たとえ戦争のまっただ中でも、困っている人には手を差しのべ、飢え死にしそうな人には食べもの分けてあげたいという気持ちは、共通のはずです。僕はそう信じたくて、そんな思いから、困っている人には自分の顔をちぎって食べさせる、心優しいアンパンマンを誕生させることに繋がりました」(「絶望の隣は希望です!」より引用)。やなせさんのアンパンマンミュージアムが潜水艦を製造・修理する造船所のすぐ横にある。神戸のこの工場・造船所は戦前から軍需工場で潜水艦や艦船を作ってきました。それで終戦直前は米軍の厳しい空襲にさらされました。工場は戦後もずっと海上自衛隊の潜水艦を作り続けています。こんな神戸だから、戦争の反省から生まれた平和の象徴のアンパンマンがこの工場のすぐそばにあっても、それはそれでいいのかもしれない。子供や大人が、世の中の矛盾をふと感じる場所になるかもしれない。何だかいろいろと考えさせられます。

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絵は2時間で描き終わり、小雨が降る中を参加した10人の絵を見ながら皆で講評会をしました。皆さん今回もとてもいい絵ができていました。講評会後、私はJR神戸駅前へ。小雨がぱらつく中を神戸駅のスケッチをしました。雨で筆ペンの線がにじむので、それと戦いながら30分の線描き。色は帰宅後につけました。

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造船所の絵
モンバル・キャンソン水彩紙 F4
青墨筆ペン
シュミンケ固形水彩絵の具 
所要時間:2時間
 
JR神戸駅の絵
アルシュ水彩紙 SMサイズ
シュミンケ固形水彩絵の具
所要時間:1時間30分(線描き30分、彩色1時間)