力強さ 増した港の スカイライン (兵庫県神戸市中央区 神戸港ハーバーランド)
2018年3月
神戸港のスケッチに来ました。JR山陽新幹線で岡山から姫路へ。姫路で新快速に乗り換えて神戸へ。東西に長く広がる神戸市内の各地に行くには、山陽新幹線で直接新神戸へ行って地下鉄に乗り換えるよりも、実質この方が速くて運賃も安くなります。
姫路に着くとホームの電光表示板の表示が「JR神戸線」になります。あれっ?神戸は山陽本線なのに・・・と思うのですが、山陽本線(門司~神戸)の姫路―神戸間と東海道本線(東京~神戸)の神戸―大阪間は、「JR神戸線」の愛称で呼ばれていて、駅の電光表示板もそのようになっています。JR姫路駅では、山陽本線とは下り方面の相生や岡山行きのことを示していて、上りの神戸・大阪方面は「JR神戸線」と言うようです。姫路から神戸方面ヘは私鉄の山陽電鉄が走っているので、それと紛らわしいのかもしれません。
私は最近はこのJR神戸線を利用することは殆どありません。関西や東京に行く時にいつも新幹線で新神戸を通過します。久しぶりにこの神戸線に乗ってみると、明石を過ぎたあたりから淡路島や明石海峡大橋が見えてとてもいい景色です。須磨の海岸も瀬戸内海がキラキラと輝いてのどかな風景です。ここは阪神間で最大の海水浴場です。夏になると電車も混むのでしょう。JR神戸線は姫路を出ると加古川・西明石・明石と次第に乗客を増やしていきます。通勤時は満員の客を乗せて走るJR西日本のドル箱路線です。運行本数は快速を含めてかなり多く、神戸や大阪への通勤や旅行には便利な路線です。
姫路から35分で神戸に着きました。神戸駅に来るのはあの阪神淡路大震災以来初めてです。駅の内部は商業施設が増えて、かつての地味な駅のたたずまいから一変していますが、建物そのものは昭和初期に建てられたままのレトロな雰囲気を保っています。駅前も私が知っている約30年前の神戸駅前とそれほど大きな変化はありません。これに対して駅の裏側、つまり神戸港側には巨大なビルが立ち並んでいてびっくりします。震災復興事業という意味もあったのでしょう、昔はJRの貨物の引き込み線があってごちゃごちゃした場所だったのに、みごとな変貌ぶりです。JR神戸駅から出たすぐの所に大きな地下通路への入口があり、そこを通ってその先の大型商業施設や港に行けるようになっています。また、ビルと部ビルの間にはスカイウオークのような歩道もついていて、天候に関係なく行き来ができます。この街の大きな変化にちょっと戸惑いながら、港に着きました。ハーバーランドという名前になっています。神戸港のシンボルである赤いポートタワーが見えます。観覧車もまわっています。広い岸壁沿いにベンチが沢山あり、どこに座っても港の風景が描けそうです。親子連れが沢山来ています。
今日はくもり時々晴れの穏やかな陽気。海から吹く風も全く寒くありません。F6の水彩紙を2枚並べて、イーゼルにセットして鉛筆の下書きを始めると、すぐに近くにいた中国人の女性観光客4、5人が絵をのぞきに来ました。「中国の方ですか?」と英語で聞いたら、「ええ、上海から来ました」との返事でした。上海はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いの中国の代表的商業都市です。上海には超高層ビルが立ち並んでいます。神戸の新しいビルと六甲山が作り出すスカイライン(空をバックにした輪郭)を見てもあまり驚かないでしょう。彼らは日本に来て、神戸を見て、何を感じているのか、何が楽しみなのか、とても聞きたく思いました。
その他にもスケッチをしている私を写真に撮る人が2、3人いました。絵を描きながらその人達と絵についての雑談もしました。途中で神戸駅のパン屋さんで買ったパンを食べながら、3時間で港の風景のスケッチは完成しました。
帰りは大型商業施設の中の人混みを通り抜けて、神戸駅に戻り、帰りの電車の時間まで、駅前の湊川神社、神戸大学医学部前まで足を伸ばし、1時間余あたりを歩いてそれから駅に引き返しました。湊川神社の周辺は私が知っている30年前とあまり変わっていません(阪神淡路大震災は1995年1月なので、今から23年前です)。中央区の西隣の兵庫区では震災を免れた古い木造の長屋も目にしました。神戸という街は六甲山と瀬戸内海に挟まれた海岸沿いの狭い土地に150万人の人口が密集しています。とても住みやすいいい街ですが、市内の地域によって経済格差が大きいことが知られています。六甲山はとてもいい山ですし(昔若い頃、朝5時から夜10時までかけて六甲全山42.195 km縦走もしました)、瀬戸内海の風も爽やかですが、「日本が格差社会から階級社会に変わりつつある」と指摘されている昨今では、その日本の現実をじわりと体現している都市の一つと言えるかもしれません。またこの活気のある神戸市でも少しずつ人口減少が起きているそうです。若い年齢層が首都圏や大阪圏に流出しています。他の都市を自分の足で歩いてみると、都市の抱える問題点が少しずつ分かってきます。
ウオーターフォード水彩紙 F6 2枚
青墨筆ペン
ウインザー&ニュートン固形水彩絵の具
所要時間:3時間