わたしの水彩スケッチと読書の旅

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美術館をめぐる旅 ― 国立国際美術館 (大阪府大阪市北区中之島)

2018年7月
 
プーシキン美術館展 ― 旅するフランス風景画」を見ようと大阪の国立国際美術館に行きました。JR新大阪駅から地下鉄御堂筋線に乗り淀屋橋下車。美術館は淀屋橋から土佐堀川沿いに歩いて15分、高層ビルの立ち並ぶ中之島の一角にあります。完全地下型の美術館で、今回の展示は地下3階。猛暑の館外から美術館に入ると広い館内は冷房が効いていて快適な空間でした。


地下だと美術品の管理にとって大事な光・温度・湿度などの条件をコントロールしやすいのでしょう。ただ唯一の心配は地震津波の影響です。淀川が近くを流れ、またここは堂島川土佐堀川にはさまれた中洲なので、大雨による水害や将来予想される南海トラフ地震に伴う津波が心配です。もし地下に水が流れ込んだらとどうなるだろうと気になったので、インターネットで大阪市の作成した水害ハザードマップを見てみました。それによると大雨で淀川が氾濫した場合も、南海トラフ地震津波が来た場合も、この中之島地域は浸水可能性ゼロとなっていました。やはりそこまで考えて地下美術館を建設しているわけですね。



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プーシキン美術館展 案内パンフレットより

 
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さて、プーシキン美術館展ですが、私の一番のお目当てはアンリ・ルソーの「馬を襲うジャガー」(1910)。入り口を入って並ぶ17世紀頃の古典的な風景画をさっと眺めて(どちらかというとすっ飛ばして)、19世紀後半から20世紀初めの印象派の絵画が並ぶ奥の方へ移動しました。見慣れた印象派の画家たちの絵。なかでもセザンヌの風景画はやはりいい。貧乏で安い絵具しか買えなかったのか、ビリジャンらしき緑色が多く使われ、地面の赤みがかった黄土色と素晴らしいコントラストです。私もスケッチしたことのあるサント=ヴィクトワール山の姿が印象的です。
モネもさすが。「草上の昼食」(1866)は有名な絵なので、実物をこの目で見ることができてよかったです。樹の葉の光り輝く表現と人々の衣装に映る光と影の描写がみごとです。私の好きなシスレーの風景画には、やはりシスレーらしさが滲んでいます。彼の描く空は広くて表情豊かです。ゴーギャンもすぐに彼の絵とわかる独特のモチーフと色合い。みんなやはりうまいなあ。



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そして最後にルソーの絵。パリの植物園に通って描いた南国のジャングルの絵。想像を膨らませて楽しく描いています。画面からあふれるこの素人っぽさと楽しさが何ともいえない魅力です。筆のタッチも伸びやかで神経質さはありません。ここでも画面を覆う植物の緑はビリジャン系。使っている緑色にそれほど色のバラエティーが無いのに対して、植物の形は踊るような生き生きとたリズムを感じさせます。また、所々に赤い花や白い花やオレンジ色の花を配置してアクセントを付けています。


全体に南国の楽園の雰囲気がよく出ています。そして中央に白い馬と馬を襲うジャガージャガーの顔が見えないのが面白いです。多分ルソー自身はジャガーの本物を見たことがなかったので、リアルに描けなかったのでしょう。そのリアルさに欠けたところがかえっていいです。何だか馬とジャガーが平和に抱き合っているようにも見えます。
 
絵はやはり個性ですね。「あっ、あの人の絵だ!」とすぐにわかるような絵を描かないとだめなのでしょう。ここに並ぶ人たちは個性がすごい。フランス印象派の画家の強烈な個性を見せつけられた展覧会でした。