わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「ヒトはこうして増えてきた 20万年の人口変遷史」 (大塚柳太郎著、新潮選書)


2017年7月12日



現在の地球の人口は72億人。そして2060年代、つまり(今年は2017年なので)あと40年余りで、地球人口は100億人に達すると推定されています。いろいろな状況を考えると、地球が維持できる人口は最大120億人ぐらいではないかと言われています。さあ、いよいよ地球が人間で飽和する事態が近づいているというわけですね。

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本書の表紙カバー(裏)に書かれた解説文に、この素晴らしい本が取り上げている内容がコンパクトにまとめられていますので、そのまま引用します。
 
『何が人類をここまで激増させたのか? 20万年前、アフリカで誕生したわれわれは穏やかに増えていくが、つい最近、突然の増加をみた。農耕が始まった約1万年前のわずか500万人が、文明が成立し始めた5500年前には1000万、265年前の産業革命で7億2000万となり、2015年には72億人に。そしてこの先どう推移するのか?人口という切り口で人類史を眺めた新しいグローバル・ヒストリー。』
 
第1章 賢いヒト 20万年前=5000人?、 第2章 移住 7万年前=50万人?、 第3章 定住と農耕 1万2000年前=500万人、 第4章 文明 5500年前=1000万人、 第5章 人口転換 265年前=7億2000万人、最終章 現在 2015年=72億人。
 
あれよあれよ、と言う間の急激な人口増加。このいわゆる「人口爆発」はテレビや新聞でも取り上げられて、一般に比較的よく知られた事実です。本書は人口問題の解説書であると同時に人類の歴史の解説書でもあります。著者の大塚氏のこのライフワークを読み終わると、「ああこんな研究も面白いなあ」、としみじみ思います。この学問分野、自然科学と社会科学・人文科学が融合したとてもスケールの大きな分野です。
 
 
私たち日本人の生活を取り巻く問題として、地球温暖化やそれに伴う異常気象などの環境問題、食べ物に関わる農林水産業など第一次産業と食糧の問題、原発や石油・石炭、そして再生可能エネルギー利用の問題を含むエネルギー問題、地震津波、火山噴火などの自然災害問題、そしてここで取り上げる人口問題などがあります。これらの問題はどれも私たちの未来にかかわる大事な問題で、私たちはこれらの問題について常に最新のニュースを見て情報を追いかけて行く必要があります。そしてもし時間のゆとりがあれば、理系の本だと敬遠しないで、専門家の書いた解説書をゆっくり読んでみることをお勧めします。最近は数式や化学式などがあまり書かれていない、しかし質が高く、じっくり考えさせる理系の入門書が増えています。
 
最後に、自然科学関係の本に普段あまり馴染みがない人に、自然科学の本の読み方について簡単なアドバイスを。自然科学の本は一晩で一気に読めるという本はほとんどありません。この本も全部で250ページほどですが、1日5~10ページぐらいずつ納得しながら読みました。時間がかかる分だけ、あとで自分の心に残る部分も大きいと思います。そして、必要があれば(ポイントだけでも)何度も繰り返し読むことになります。客観的事実を知って、あとは自分の頭でゆっくり内容を噛みしめ、そして自分の頭で考える。一見ぼーっとして無駄な時間のようだけど、ある時は本当にゆるんだ状態の、そしてある時はかなり集中した思索の時間。結論は出なくてもいい。自分で理解しようとする。そして少し理解が前に進んで滿足する。そんな時が、「自然科学はシンプルですばらしい(美しい)」と感じ、また「自分が少し成長した」と感じる瞬間です。