わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんな本読んだことありますか? 「中学生になったら」 (宮下 聡著、岩波ジュニア新書)

2017年6月27日


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今日の新聞各紙は、中学生3年生の棋士藤井聡太四段(14)の29連勝を第一面トップの大見出しで伝えています。1987年に神谷広志八段(56)が打ち立てた「不滅」の大記録28連勝を中学生棋士が破ったので、日本中大騒ぎです。

 

藤井四段は5歳から10歳まで愛知県瀬戸市の子供将棋教室に通い、メキメキと腕をあげました。自分の好きな将棋にのめりこんで、集中力と闘争心で頑張り抜く。10年間頑張り続けることでこんなにも才能が伸びるんですね。これは何も小学生や中学生だけでなく、一般の大人にも共通して言えることだと思います。そして将棋に限らず、ピアノやバイオリン、バレー、水泳や野球、サッカーなどのスポーツ、更には普通の勉強もすべて同じ。自分の好きな事をどういうチャンスに見つけてどう伸ばすか、それによって自分の生きる軸足が自然に決まってくるでしょう。

 

とは言っても、普通の小中学生だと学校の先生、友達、親などから日々様々な影響を受けながら、現実には遊びや自由な時間よりも塾や宿題、また部活で精一杯の毎日かもしれません。学校では勉強以外に、クラスの仲間との関係に悩み、時にはいじめの問題もあるでしょう。日本の子供の6人に1人が貧困状態と言われるなかで、母子家庭などで日々の生活に苦しい家庭もあると思います。私たちが過ごしたずっと昔の小中学生時代とは全く違う状況が今学校で起きているかもしれないと思い、この「中学生になったら」を読んでみました。

 

この本は、中学生はもちろん、間もなく中学生になる小学校高学年の生徒、学校の先生、小中学生をもつ親が一度読んでおくとよい本だと思います。

序章「中学生時代は人生の土台」、1章「中学校の生活」、2章「中学生の勉強方法」、3章「学ぶことの意義を考える」、4章「進路を拓く、人生をデザインする」、5章「一緒に考えましょう、こんなときどうする」、終章「子どもの権利条約にであいましたか」。終章の「子どもの権利条約」は、私はよく知りませんでした。子どもの権利条約とは、18歳未満のすべての人の安心・自信・自由という人権を守ること、生きる・育つ・守られる・参加するという子どもの権利についての条約だということです。日本は1994年に国会で批准しました。

 

著者は長い間中学校で教員をした経験から、具体的に分かりやすく中学生の学校生活についての提案をしています。どの章にも、生徒に寄り添い、励まし、親身になってアドバイスする著者の姿があります。中学生自身がこの本を読むと、自分の生活についてとてもよい指針が得られるかもしれません。

 

最後に、「おわりに―この本に込めた思い」の一部をここに引用しておきます。

「私たちは人生の中で学校の卒業式というものを何回か経験しますが、中学校の卒業式ほど泣ける卒業式はないと思います。それは、中学生時代が人生の中でも類を見ない激動と成長の3年間だからです。今、社会が複雑化して家族のあり方や大人の生活も変化する中、中学生も大人社会の影響を受けて大きく揺れています。こうした、大人社会が原因で起きている中学生の問題まで中学生のせいにして語る大人たちには不快感を感じますが、そのことで自分を責めたり未来をあきらめたりしている中学生には応援のエールを送りたいです。

 大丈夫だよ!キミは一人じゃないからね。『なりたい自分』を大切にして、あきらめずに進んでいこう!」