わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『ルポ 貧困女子』(飯島裕子著、岩波新書)

2021年3月31日

 

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この本、2日ほど前に一気に読みました。読んだ後、そのインパクトの大きさに、しばらく考え込んでしまいました。我が日本って、いつの間にこんなに苦しみをためこんだ国民だらけになってしまったんだろう・・・。事実を知って驚き、気持ちが少し沈みました。著者は16歳から47歳までの47人のシングル女性にインタビューし、その内容を具体的に紹介しながら、問題を丁寧に分析していきます。

 

「序章 女性の貧困とは?」の文頭で、いきなり我が国のシングル女性の貧困問題の現実が突きつけられます。(以下引用)

 

「貧困女子の登場!?  2011年12月、『朝日新聞』の一面トップに「単身女性、3人に1人が貧困」という記事が掲載された。これは国立社会保障・人口問題研究所が2007年の「国民生活基礎調査」をもとに相対的貧困率を計測したもので、20歳から64歳までの単身女性の32%が国民一人あたりの可処分所得の半分未満(2007年では114万円未満)であるという。

 65歳以上の高齢女性及び母子世帯の貧困率はさらに深刻で、いずれも貧困率が50%に達しているが、この記事が出た後、にわかに注目されたのは、20代、30代の若年シングル女性だった。」

 

しかし、その後、何度かこの問題は取り上げられてきたものの、継続して注目が集まることはなく、今日に至っています。

本書では、シングル女性の抱える問題を、インタビューした女性たちの語りを中心に紹介していきます。インタビューの内容がそれぞれ具体的で切実な問題を含んでいるので、問題の実態がよく分かります。

 

  • 家族という危ういセーフネット
  • 家事手伝いに潜む闇
  • 正社員でも厳しい
  • 非正規という負の連鎖
  • 結婚・出産プレッシャー
  • 女性の分断

終章 一筋の光を求めて

 

それぞれの章で語られるシングル女性の生活がリアリティをもって迫ってきます。シングル女性が生きづらい社会。女性が活躍しにくい社会。どうすれば解決できるのだろうか。いろいろ考えてしまいます。現在の日本では、政治にこうした問題をかかえる女性の声を反映させることが難しいのは事実です。

 

今日(3月31日)のNHKのNEWSWEB(ニュースウエブ)の記事「世界各地の男女格差 日本は156か国中120位」も、前から言われていることなのに全然改善の方向が見えない男女差別の実際を数字で示しています。日本は女性の政治参加(147位)と経済での活躍の分野(117位)で評価がとても低いのです。これに関連して、国連が3月19日に発表した「世界幸福度ランキング」では1位フィンランド、2位デンマーク、3位スイス。日本は56位です。この順位は男女格差の順位とかなり似ており、女性が活躍する北欧諸国では国民の幸福度が高いように見えます。

 

例えば、北欧のスウエーデンでは税金がとても高い代わりに、子供の教育費は大学卒業まで無料だと聞きました。また仕事がなくても国民の最低生活はある程度保証されているとも聞きました。最近、日本の国会でも全国民の最低生活保障の必要性を述べる議員が何人か出てきていますが、これは考えてみる価値が十分あるのではないでしょうか。北欧諸国がそれを行って、国民がこんなに高い幸福度を示しているのですから。

 

日本の国全体で動き出すのが無理なら、それぞれの地方や地域で、独自のセイフティネット(こども食堂もその一つ)を作って、貧困に苦しむ人を援助することも大事でしょう。菅首相は「まず自助、次に公助」と言っていますが、自分で努力してもどうにもならない人が増えている現在、公助の仕組みをもっと整えて行くのはとても大事に思えます。今は何とか生活できていても、いつどんなことで生活が破綻するか、誰にもわからない時代です。まして新型コロナの流行で先は全く見えない。若者も高齢者も女性も男性も、政治家に全て任せっきりにするのではなく、何かアクションを起こす必要があると感じました。