わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「ルポ 貧困大国アメリカ」・「ルポ 貧困大国アメリカII」 (堤 未果著、岩波新書)

2017年3月25日


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正直言って、こんなにショックを受けた本は最近まれです。アメリカの貧困の現状が非常にリアルに描かれています。私が10代や20代の頃にテレビで見たあのうらやましいほど豊かで幸福な中産階級家庭の姿は一体どこに行ったんだろう、とこの2冊の本を読んでしみじみ思います。
 
アメリカで進むのは急速な社会の変化、つまり経済格差の更なる広がり、そしてかつて人口の大きな割合を占めていた中流層貧困層への転落です。世界一高い医療費で破産する中間層、高額の学資ローンが払えなくて破産する学生、月々わずかの年金で暮らす高齢者の生活破綻。彼らの姿が著者の精力的な取材で次々と描き出されます。
 
アメリカの医療費が高いのは有名です。この本の第3章の文章には、「日本では盲腸の手術代は6万4千200円。4、5日入院しても合計で30万円を超えることはまずない。国民健康保険に加入している一般所得者の場合、最高自己負担額は約8万100円が上限だ」とあります。そしてその文章のすぐ横に盲腸手術入院の都市別費用ランキングが書いてあり、それを見ると一位ニューヨークは平均入院日数は1日で、費用は何と243万円です! アメリカでは妊婦も入院費が高くて、日帰り出産が年々増えているそうです。つまり、アメリカで病気になると、簡単に病院には行けない。そして一度病気になると個人破産に追い込まれる。なんとも凄まじい状況です。これを改革しようと、オバマ前大統領は「国民皆保険制度、オバマケア」を導入しようとしたわけですね。
 
そして私が一番ショックだったのは、大学生の学資ローン問題。高い大学入学金と授業料を払うためにローンを組むと、卒業時には大きな負債を抱え込みます。それを返すためによい就職口を探そうとしても、なかなかよい会社に入れない。そのうち、ローンの返済を少しでも延滞することになると、とんでもない返済の利率上昇で借金が膨らみ、毎日のように電話で返済の催促を受ける。そして次第に追い詰められる。返済を助けてくれる唯一の機関が軍隊。そういうわけで、若者たちが学資ローンの返済のために志願して入隊。そしてすぐにイラクへ派遣。イラクでは厳しい戦闘の現場に送られ、最悪の場合戦死、死ななくても負傷、そして無事帰国しても心的ストレスでノイローゼに。こんなアメリカの若者は本当にかわいそうです。
 
著者によると、これはすべて利益優先・効率第一の「民営化」の影響です。アメリカでは健康保険も、学資ローンも、老人施設も、そして何と刑務所まで民営だそうです。日本でも国鉄電電公社の民営化、郵政の民営化がありました。大学も国立でありながら法人化され、民間企業のような効率の良い成果主義の経営が求められています。さて、それでよかったのか。
 
そしてアメリカの陸海空軍だけではなく、日本の自衛隊も貧しい家庭の子供達や就職のない学生の受け皿になっているかもしれない。いやそれよりも、日本でもっと深刻なのは、余り報道されないけれど、日々福島の原発廃炉作業や周辺地域の除染に派遣されている大量の労働者でしょう。都会で就職口のない人たちが生きるために仕方なく福島で働く。一体一日あたりどれくらいの数の人達が福島の原発関連施設で働いているのでしょう。そしてその人達の放射能汚染に対する健康管理対策はどうなっているのでしょう。この本で貧困大国アメリカの姿を具体的に聞かされると、明日は我が身という気分になり、とても落ち込みます。これまでの経験で日本は大なり小なりアメリカの歩む道を同じように辿っている気がするからです。国民の経済格差が進み、中流下流に。そして下流から這い上がるには教育を含めて相当の自己努力がいる社会。年金暮らしの老人もいつの間にか破産に追い込まれる。「下流老人」という本も評判になりました。最近の厚労省国民意識調査では国民の24%が真剣に自殺を考えたことがあるとか。そしてそのような気持ちになるのは50歳代が一番多いようです。原因は病気と暮らし。そして国民の幸福度は世界50位という最新の調査結果も。過重労働社会、女性の社会進出が大きく遅れた社会、少子高齢化の人口減少社会。東京一極集中で地方市町村が消滅する社会、6百60兆円の大きな負債を抱える国家。いったい、この国の人たちは本当に幸福なのか。これから幸福に感じる人は増えるのか、それとも減るのか。これがとても心配になります。政治の果たす役割がとても大事になります。この2冊の本を読んで日本の将来を考え、政治のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。