わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

この紙には ある種不思議な 力あり (岡山県岡山市北区 里山風景)

2016年11月


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水彩紙の特徴をつかむために、今日は前回と同じ場所でアルシュ水彩紙の粗目を使って秋の里山風景を描きました。アルシュ水彩紙はフランスの高級水彩紙です。私は比較的粗目が好きなのですが、普段最もよく使うのはラングトンやウオーターフォード水彩紙の中目です。前回使ったモンバルキャンソン紙が中目でも細目のように表面が滑らかなのに比べて、今回のアルシュ水彩紙の粗目はその真反対な感じ。指先で触ると、表面の凸凹した感じが分かります。この紙に鉛筆で下書きすると、少し引っかかりがある感じ。まっすぐ引いたつもりの線も紙の表面の凹凸の影響でまっすぐにならずにあちこちで歪みます。下書きの鉛筆の線の次に引く正式な筆ペンの線も同じ。線がかすれます。この粗目の水彩紙を使い続けると、筆ペンや彩色用の筆の穂先が早く摩耗してきます。鉛筆や筆がツルツルと滑るように動いたモンバルキャンソン紙とは大違いです。
 
こんな粗目のアルシュ水彩紙ですが、色を塗ってみると何とも不思議な感じ。色が乾くと色が沈むのはアルシュ紙の特徴としてよく知られていますが、思った通りに色が出ないので少しやけになって乱暴に水をたっぷりふくんだ筆で濃い色を加えても、紙に包容力があるというか、怒らず受け入れてくれる感じがあります。粗目なので、色が紙の表面の細いくぼみにたまるのか、あるいはくぼみで光が乱反射するのか、色調に深みがでます。モンバルキャンソン紙ではぺったり色が付く感じなのに対して、アルシュの粗目では紙の深いところまで絵の具が行っている感じ。さらに、一度塗った色をガーゼなどで拭いてもこすっても大丈夫。その意味で、時間をかけて水彩のいろいろな画法を楽しみながら絵を完成させるのには一番向いています。私のように短時間で淡彩的に絵を仕上げる場合には、ちょっと紙の力が十分発揮できないかもしれません。それでも、自分の予想とは違う効果を生んでくれるのがこの紙です。そして、現場で描いた後、色がちょっと地味だなあと思っても、帰ってもう一度眺めると、深みのある発色に満足します。アルシュ紙には初めに大きな期待を持ちますが、実際、紙にはその期待に応えてくれる不思議な力があるようです。


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アルシュ水彩紙 F6 粗目
ぺんてる筆ペン
ウインザー&ニュートン固形水彩絵の具
所要時間:2時間