わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「わが愛する夭折(ようせつ)画家たち」(窪島誠一郎著、講談社現代新書)、「松本竣介 線と言葉」(コロナ・ブックス、平凡社)

2016年6月9日

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「わが愛する夭折画家たち」に書かれているのは、村山槐多(かいた)(1896-1919)、関根正二(1899-1919)、松本竣介(1912-48)、靉 光(あいみつ)(1907-46)、野田英夫(1908-39)、広幡 憲(ひろはた けん)(1911-48)の6人です。
 
先日、岡山市の中心部で古びた、しかし昭和の時代を映す堂々とした姿をとどめながら建っている酒造会社の酒蔵と煙突をスケッチしながら、戦時中に「反戦」の意志を貫いて軍や政府に迎合しない絵を描き続け、終戦後わずか36歳の若さで亡くなった松本竣介の「議事堂のある風景」を思い出していました。

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松本竣介の絵を見ると、多くの絵に煙突が描かれているのに気がつきます。多分竣介にとっては、煙突は画面を構成する上での大切なモチーフだったのでしょう。その他にも街灯、電柱などが黒い存在感のある縦の線を構成しています。私が見た酒造会社の黒黒とした木造の建物と高い煙突も、俊介が好きそうな風景です。
 
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議事堂のある風景


竣介の絵を見ると、いつも鋭い線描きや人物像、そして青や赤や黒や茶色の独特の透明感のある色使いに惹かれます。私は西洋の画家では印象派シスレーの風景画とモジリアーニの人物画が好きですが、日本の画家だとこの松本俊介です。倉敷の大原美術館には「都会」が展示されていますが、これを見るたびに、よくここにこの絵があってくれたと感謝します。


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都会
 

「わが愛する夭折画家たち」では、著者の窪島誠一郎さんの文章の力で6人の生きざまがいきいきと再現されています。村山槐多は有名なのでそのスケッチと生涯はよく知られていますが、その他の人たちも負けず劣らず個性的な画家であったことがわかります。
この本を読み進むうちに、次第に著者の窪島さんの方に関心が移ってしまうのも不思議です。やはり文章力でしょうか。うまい文章です。幼くして養父母に預けられ貧乏生活の末にやがて絵の収集と評論の世界に入り、長野県上田市に「信濃デッサン館」を作ったことで有名な人です。実父である作家・水上勉と35年ぶりに再会したことでも知られています。お父さんの血を引いてこんなに文章がうまいのでしょうか。この窪島さんの生き様を知ると、是非「信濃デッサン館」に出かけて夭折画家たちの絵を見てみたい気になります。


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立てる像