わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

映画「ターナー、光に愛を求めて」

2015年7月30日

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マイク・リー監督作品「ターナー、光に愛を求めて」を見ました。19世紀イギリスを代表する水彩風景画家ターナーの後半生を描いた作品です。主演はティモシー・スポール。この映画で大67回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を取ったそうです。ターナーの若いころの自画像があまりにも有名なので、ターナーという人は線の細い繊細な感じの人だったのかと思っていたのですが、どうやらそれは間違いで、この映画ではターナーはもう十分名声を得て、しかし不器用で孤独な中年太りの男性として描かれていました。

 

印象的だったのは、ターナーはいつも山高帽をかぶって、おおきなカバンを下げていて、その中には手帳かノートサイズ位のスケッチブックが入っていて、旅先でも音楽会でもどこでもいつもスケッチブックを開いてスケッチを欠かさないというところです。そして筆は1,2本しかもっていないように見えました。

 

ターナーは緑を描くのが苦手だったようで、緑色の絵の具をなるべく使わないようにしたそうです。そして、ターナーの絵では自分の好きな黄色が画面のかなりの部分を占めました。その結果、イギリスの皇族が展覧会に来てターナーの絵を見た時には、「dirty yellow mess」(汚い黄色のごちゃごちゃした絵)と嘲笑されたりしました。当時ターナーの絵は、大きな評価を得ていたのですが、また一方ではこのように嘲笑や厳しい批判にもさらされたようです。

 

ターナーが油絵を描く場面では、筆使いが大胆で、時には自分の唾を画面に吐きかけるなど、ターナーの絵から受ける感じとはかなり異なる荒々しい制作をしていたのが分かりました。

 

ターナーは若い頃から絶えず旅を続けて自分を自然の中に置き、新たな表現を模索しましたが、最後はテムズ川のほとりにアトリエと住居を構えて、かつて訪れた港町で好きになった宿の女将と一緒に幸せな年月を過ごしました。映画の中で出てきたターナーのアトリエ兼住居は、私が先日ロンドンを訪れて実際に目にした建物とそっくりでした。映画はターナーと彼を取り巻く女性たちの話を中心に進みました。当時のイギリスの絵の展覧会の様子なども再現され、参考になりました。

 

ターナーの最後の臨終の言葉は「The Sun  is  God」(太陽は神だ)でした。なかなかカッコいいですね。自分の絵を画商に売ったりせず、まとめて国に寄付するところなども、たいしたものだと思いました。若い時から画家として成功していたので、経済的にも恵まれていたようです。この映画、私のターナーに対するイメージを大きく変えてくれました。