わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『平山郁夫 私のスケッチ技法』(平山郁夫著、村木 明解説、実業之日本社)

2021年3月9日

 

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日本画家・平山郁夫さんのスケッチ画集です。のびのびとした風景スケッチ。おだやかな人物スケッチ。世界各地の仏像や遺跡のスケッチ。平山作品(日本画の大作)のもとになった多くのスケッチが収められています。平山さんの自分の絵についての解説はどちらかというと短めで、それを補う形で村木さんのやや長めの解説文が入ります。ただ、その解説を丹念に追うよりも、平山さんのスケッチに浸っていたいという気分になります。短時間で描いたシンプルなスケッチの数々。それらをじっと眺めているだけで大きな感動を与えられます。

 

スケッチは、やはり線が決め手です。鉛筆の線の動きが命です。平山さんのスケッチを見ると、線がすうーっと一定の速度で引かれるのではなく、途中でかなり頻繁に立ち止まっています。この本の表紙に描かれている人物のスケッチでもそうです。ためらっているのか、何か効果をねらっているのか・・・。これが私にとってはとても気になります。立ち止まって、鉛筆の方向を変えて、進んで、また立ち止まる。その繰り返しで形をとっていく。後で見ると、これが面白い鉛筆のリズム感を生み出しているのがわかります。

 

絵を描くとき、鉛筆、ペン、筆、木炭などいろいろなもので線を引きますが、特に鉛筆は難しいと言われています。その人の技量が正直に線にでるからです。その意味で、私は自分が描いた鉛筆の線を人に見せるのは自信がありません。鉛筆で線の濃淡、線の太い細いを出すのは難しいので、私の場合は筆ペンで線を引いています。線の勢いや強弱が出しやすいです。しかし、平山さんの鉛筆画では、上に書いたように、鉛筆の線の立ち止まりの連続で面白いリズムがでています。

 

解説によると、平山さんは昭和22年に東京美術学校(現東京芸大)の日本画科に入学するのですが、周りの同級生の絵が上手すぎて、たびたび自信を喪失したそうです。何度かの挫折の後、膨大な量の古典の模写とスケッチに没頭することで自己修練を積み、長年の努力によって才能を開花させました。とにかく、いつどこにいてもスケッチ帳を開いてスケッチする。この態度がプロの画家には求められるのです。

 

私も2,3年前までは毎日の散歩にスケッチブックを持っていましたが、最近はこれを忘れています。またそれを復活させようと、この本を読んで思いました。