街道筋に 見事にまぎれた 新建築 （岡山県津山市城東地区 水彩スケッチ）

２０２０年１月１３日

グループスケッチの下見で津山の城東地区に来ました。旧出雲街道筋の古い家並みは有名です。JR津山駅で降りて駅のすぐ前に停まっている市内循環の小型バスに乗って目的地へ。駅から１０分ほどで目的地に到着しました。冬の津山は、祭日とは言えさすがに観光客が少ない。城東地区は前に何度も来てよく知っている場所ですが、スケッチするのは初めて。この町並みを一度はスケッチしたいと思っていました。

郵便局前でバスを降りると、すぐそばに「作州城東屋敷」があります。江戸時代にタイムスリップしたような白壁の町家のたたずまい。横に立っている火の見櫓も絵になります。ここを描こうかな、と思ってこの周りを歩き回っていると、「これからどこを見られるん？」と管理人の男性から声をかけられました。絵を描きに来たと言うと、「この建物は古くないよ。平成５年に出来たんだから」と意外な返事。「ちょっと中を見せて下さい」と中に入ると、いかにも江戸時代を思わせる内部のつくり。「わあ、これが平成に出来たんですか・・・。見事ですね。てっきり古い昔のままの町家と思いましたよ」と私。

どうやら平成に入って市が新たにこの建物を観光のために建てたようです。板壁の肌触りや色あいは、いかにも年月を経たような感じになっています。この管理人さんが正直な人で、何でも隠さず話してくれるので、この作州城東屋敷をスケッチせずにすみました。本物の古い家屋の修理はこの城東地区のあちこちで行われています。町並みを保存する事業も地方自治体にとっては大変なことです。管理人さんの話によると、通りに面した部分だけは市から援助が出るので時間がかかっても修理するが、後ろの部分はそのまま何もしないで放置したり自分で勝手に作り変えたりする家が多いとか。

「作州城東屋敷」の後ろに「だんじり展示館」があり、そこも管理人さんに案内してもらいました。私が一番気に入ったのは、壁面にかけらた多くの水彩画でした、地元画家の河野磐さんが描いたものです。これは見事でした。ちょっとターナーをおもわせるスケッチと色使い。地元の高校・女子大で長年美術教育に関わった人のようで、とても絵がうまい。最近の水彩画で流行りの劇的な色使いや表現とは異なり、どれもしっとりと落ち着いた絵です。「これ、皆とてもいいですねえ。こんな建物、まだ残っていますか？」と尋ねると、「これらはもう今は全部壊してしまって、さあ、残っているのは苅田酒造ぐらいかなあ」との返事でした。それですぐにその苅田酒造の建物を描くことに決めて、そちらに移動しました。歩いてすぐです。

苅田酒造（跡）、とてもいいです。周りをぐるりと回ってみました。スケッチは、構図と日当たりを考えて、狭い路地の脇に座って始めました。今日は比較的暖かい朝でしたが、時折風が強く吹いて、昼頃になるとやや曇って気温が下がってきました。約１時間半、携帯椅子に座ってF4の小さいスケッチブックに描きました。途中、この細い路地を意外と車が通行し、そのたびに車を避けなければならなかったのがこのポイントの難点でした。絵が出来上がって見ると、建物の日陰ばかりが強調された絵になってしまいましたが、これが事実なのでまあいいとしましょう。そのうち、ちょっと身震いするぐらい寒くなってきたので、道具を片付けて城東観光案内所へ避難。トイレに行って、土産物を買って、それから外に出て再び歩いて、１０日後のグループスケッチのためのスケッチポイントを調べて、午後１時半過ぎのバスに乗ってJR津山駅に向かいました。

冬だと野外スケッチはなかなか根性が要ります。今日の現地滞在時間はコンビニで買ってきたおにぎりを食べる時間を含めて３時間半でした。まあ、これぐらいが体に無理のないスケジュールだと思います。今日はこれでも暖かい方です。厳冬の津山は、雪もあり、もっと寒いでしょう。次は、城東地区の町家の屋根越しに見える津山城の石垣を雪景色の中で描けたらいいなあ、とちょっと期待したりしています。

Avalon水彩紙　F4

青墨筆ペン

シュミンケ固形水彩絵の具

所要時間：１時間３０分