わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

この人もすごい! 山下清さん

2015年6月22日

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今日の朝日新聞朝刊の文化・文芸欄は「今こそ 山下清」でした。おなじみ「裸の大将」、そして「日本のゴッホ」、「放浪の画家」と呼ばれた人です。
 
「1922年、現在の東京都台東区生まれ。小学校では言語障害をからかわれ、軽い傷害事件も。34年、千葉県の八幡学園へ。放浪を続け、71年、『今年の花火見物はどこに行こうかな』という言葉を残し、脳出血で死去」(以上、朝日新聞の記事より)。
 
小さく切った色紙を貼って描く貼絵で「長岡の花火」など、見事な作品を沢山残しました。
私も子供の頃、山陰地方のデパートの催し物会場で「山下清展」をはじめて見た時に大変感動したのを憶えています。
 
この記事のポイントは、「既成の美術教育を受けていない人たちによる、時に反体制的な表現が、美術を切り開く可能性をもっている」という美術評論家の意見で、山下清さんもそのような人の一人だと言っています。その評論家はさらに「西洋近代を中心とする美術の世界では、日本を含む非西欧圏は実はアウトサイダーです。それを忘れない方がいい」と述べています。そしてこの新聞記事は、「そう、私たちはみんな、一人で旅する山下清になりうるのだ」という文章で締めくくられています。
 
この記事は、現在の日本の美術界のもっている問題点と可能性をさりげなく読者に示しているような気がします。美術を志す人達の多くが日展院展を頂点とする様々な公募展への入選・入賞を目指し、そのために美術団体やグループに所属し、それぞれの組織にいる大先生を頂点とするピラミッド型の厳しい階層の中で苦悩する、という姿をよく耳にします。決められた締め切りに間に合わせるために毎年毎年、同じように苦しみ、入選・落選の心の葛藤を味わう。そして先生の指導された通りに絵を仕上げる。私のようなアマチュアから見ると、「これで本当に素直に絵を楽しんで描いていけるのだろうか」、と心配になります。そしてたとえそのように苦労して公募展で入選しても、今日の新聞記事にあったように日本の美術界は国際的には所詮「アウトサイダー」的扱いをうけるのです。
 
私は前から思っているのですが、本当に自由に自分が好きで絵を描いている沢山のアマチュアの人達に、今や大きなチャンスというか転機というか、そういう時代の流れが来ているように思えます。具体的には、この「ブログ」のように自由に自分の作品をインターネット上に掲載し、世界中の人たちに見てもらえることが出来る時代が今ここにあります。絵を載せる人も絵を見る人も気軽に絵を楽しむことができる。そして絵を描いた人の人柄に触れることもできます。これは本当に素晴らしいことです。しかも展示料や掲載料は無料。そして絵がたくさんたまれば、誰に遠慮もなく個展をやったり、本を自費出版したりできます。


古い美術団体の権威に縛られない自由な「アウトサイダー」としての活動。きっとこのような活動のなかから将来の日本の美術を切り開く力が出てくるのではないかという気がします。老いも若きも、男性も女性も、そして山下清さんのような知的障害をもつ人たちも、絵が好きな皆さん、山下清さんのように「一人で旅するアマチュア画家」として、また「アウトサイダー」として頑張っていきましょう!!