わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

夏の木立、よく見るとその緑色には濃淡の勾配があります!! (科学の目で見た水彩画)

2015年6月23日

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この時期、野外スケッチをすると木々の緑や田んぼ、野原の緑に圧倒されます。最近は日毎に新緑の淡い緑が濃さを増して、「夏の緑」に近づいています。梅雨が明けるとこの緑のパワーが一層まして、絵描きには悩ましい季節です。緑を水彩画でどう描くか。人によっていろいろな知恵があるようです。

 

多分一般的に誰でもやっているのが、黄色の絵の具をパレットの上でたっぷりの水で薄めて、水彩紙の画面の黄色や緑の部分に予め塗っておくという方法だと思います。黄色はあとからその上にかぶせる色の邪魔をしないので、画面の中で色面を作るためにも大胆なタッチでぬってよいと言われています。それで私も木立や草の部分には薄めた黄色をたっぷり塗ります。そのためパレットの中で黄色の絵の具は他の絵の具より早めに無くなる傾向にあります。

 

ところで実際の自然界では木立の緑や草の色はどうなっているでしょう。よくよく見てみると、一本の木の緑も木のてっぺんと木の下の方では緑色の濃さが違うことに気が付きます。上の方、つまり太陽の光が直接あたる部分では緑が薄く、木の下の地面に近いところでは緑が濃くなっています。これは植物の緑色の色素であるクロロフィル葉緑素)の濃度が木のてっぺん付近では小さく(薄く)、木の下の方では大きい(濃い)ことによります。なぜ、このようなことになるかというと、木のてっぺんの葉には太陽光が十分に当たり、昼間はむしろ過剰なぐらいの光が当たっているので、クロロフィルの量を減らして光の吸収量を落としているのです。一方、木の下の方では、光がまだ十分葉の表面に来ていない場所があり、そこでは光を吸収するためにクロロフィルの量を増やしています。というわけで、この時期に木の緑を描く時には、上の方は緑を薄めに、下の方は緑を濃い目に塗るのが自然です。葉には黄色い色も含まれていますが、これはカロテノイドという色素が示す色です。このカロテノイドは光が強くても弱くてもクロロフィルほどその量は変化しません。丁度水彩画の黄色の「下地」のように、葉の中でも「下地」的な役割をしています。このカロテノイドは光が弱い時はクロロフィルを助けて光を集める作業をし、光が強くなるとクロロフィルが吸収した余分な光を熱として逃がす役割をしています。このようにクロロフィルとカロテノイドは一日の朝昼晩で、また季節によって、刻々と変化する光をうまく使うために協同して働いています。


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こういうわけで、木の緑を描く時には木の上の方は黄色かがった緑で、下の方は深い緑で描くのが理屈にかなっています。私は木の下の方の緑色については、黄色のベースの色が乾いた後で濃い目の青を塗ります。絵の具のそのままの緑色をなるべく使わないで、上に書いたような緑の勾配(グラディエント)に気を付けながら、黄色と青の混色、時には赤も加えて、様々な緑色をつくります。