わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「エンピツ画のすすめ」(風間 完著、朝日文庫)

 2019年9月18日

 

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20年ほど前に発刊され、今はもう絶版となってしまった鉛筆画入門の名著です。アマゾンでは1円〜44円という驚きの値段で中古本が販売されています(こんな素晴らしい本なのに、ちょっと寂しいですね)。著者は1019年(大正8年)東京生まれ、2003年没。もし生きておられたら、今年100歳を迎えられたはずです。新聞や週刊誌の連載小説の挿絵を多く描かれ、当時の人気画家の一人でした。描かれた絵にはなんとも言えない独特の情緒がだだよっています。風景画も人物画も、鉛筆の線が自由で柔らかく、動きがあり、伸び伸びとしています。私が水彩画に興味を持った頃(約20年前)、この本を本屋さんの店頭で見つけ、迷わず購入しました。それ以来、何度も何度も読んで今でも時々開いて読みます。

 

水彩による彩色もとてもいいです。淡彩で、使っている色数は少ないのですが、雰囲気がよく出ています。風間さんはもちろんプロの絵描きさんです。しかし、趣味で絵を描く人の伸び伸びとした楽しい絵をうらやましく思われ、自身もアマチュアの素人っぽさ、素朴さを目指されたような感じをうけます。

 

本文中にもあちこちにアマチュア画家を激励する文章が書かれています。

『自分の趣味を持つということは、これらの世の中の約束ごとから全く解放された自分だけの世界を持つということだろうと思うのです。絵の世界の額縁の中は世俗から隔絶された自由の国であると言えます。絵を描く趣味を持つ人は自由の国に遊ぶことのできる幸せなそこの住人です。

 仮に趣味で絵を描く人でなく、これを職業にしますと、またそれはそれなりにプロとしての制約や苦しさがあるからそうは簡単にいかないのです。

 ですから趣味で絵を描く人の絵はプロの絵描きが見ると自由で伸び伸びとしていて羨(うらや)ましい雰囲気を持っているものがあります。

 この気持を忘れないで自由で伸び伸びとした絵を描くことをおすすめしたいのです』

 

このように、この本には風間さんの絵に対する心構えや、アマチュアへのアドバイスがたくさん書かれています。本文の後半には、鉛筆、消しゴム、用紙などの画材についての説明もあり、初心者の参考になります。文庫本サイズの本でありながら、収められた絵の印刷がきれいで、いつまでも手元に置いていたい一冊です。