わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか?「定年後 ― 豊かに生きるための知恵」(加藤 仁著、岩波新書)

2015年6月9日

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本の帯紙には、悔いのない「8万時間」のためのヒント満載 ガイダンスの決定版!」とあります。この言葉に惹かれてこの本を買って読みました。最初は、いろいろな退職者の経験談を「ああ、こんな生き方もあるんだ」と、ざっと眺めて参考にする程度に。そして、2回目は緑色の蛍光マーカーペンで所々線を引いて、気に入った人たちの生き方に共感しながら。そして、3回目は、こんなに様々なケースを調べあげた著者の努力に感心しつつ、太い赤いマーカーペンで気になる部分に更に印を付けて読みました。当初、この本を3度も読み返すとは思ってもいませんでした。多分、これからも4回、5回と読み直すと思います。それぐらい、このガイダンスは具体的で参考になります。著者は3000人以上の定年退職者に対して25年余り取材を重ねて、この本をまとめたとか。定年退職者の悩み、葛藤、そして何とかして納得のいく第二の人生を過ごしたいという気持ちがよく伝わってきます。

 

本文の「8万時間」の部分を抜き出します。

 

「この数字を知ると、だれもがはっとさせられる。二十歳から働きはじめて六十歳で定年を迎えたとすると、それまでの労働時間の総計は二千時間(年間労働時間)x 四十年間 = 八万時間になる。この八万時間の報酬としてマイホームの購入、子育て、社内の昇進昇格をやってのけたことになる。では定年後はのんびりとすごすことにする。睡眠や食事、入浴の時間を差し引くと、一日の余暇時間は平均して十一時間以上もある。八十歳まで生きるとすれば十一時間 x 三百六十五日 x 二十年間 = 八万三百時間である。つまり定年後の余暇時間は、会社で働いていた時間とほぼおなじということになる。この“八万時間”によって、これからはなにを得ようとするのか。」

 

この部分に私が赤のマーカーペンで太く線を引いたのは言うまでもありません。退職後にこんなに自由な時間があるんですね!! 更に著者は、本文の「はじめに」の部分で夏目漱石の「私の個人主義」を引用して、退職後は「他人本位」から「自己本位」に生き方を転換すべきだと述べています。私もこの漱石の文章を読んでみて、成程と思いました。漱石も教育現場や組織の中で苦しんでいましたが、やがて一人で文筆活動を行う道を選んでそこで自分の個性を発揮し、活き活きと活躍することになった訳ですね。

 

退職後は、全て自分の力で自分の意志で何事もやっていかなければなりません。それが組織で仕事をしていた頃とは違って逆に新鮮で、新たな生きる力になります。もうあまり頑張らなくてもいいのですが、自分で自由に自分の生き方の舵を切りながら、「現役時代は退職後大きく羽ばたくための滑走期だった」なんて、後になって格好よくクールに言ってみたいものですね!!