英語で「国旗」って言えますか?
2015年6月10日
岡山県南部はいよいよ田植えのシーズンになりました。朝の散歩をしていると、水路から水を入れる準備をしている田んぼがあちこちに見られます。梅雨の時期なので、水を入れていないのに田んぼにかなり水がたまっている場所もあって、そこではカエルが元気に鳴き始めています。どんなカエルがいるのだろう、とちょっと目を凝らしてみると、耕した土の上にほんの指先ほどの小さなカエルがいて、それが驚くほどの声量で鳴いていました。カエルはあんな小さな体でよくあんな大きな声が出せるなあと感心しました。
カエルというと、昔の忘れられない思い出があります。まだ私が20歳代だった頃、あこがれのアメリカに長期で出かける機会がありました。折角アメリカに来たのだから、記念にアメリカ国旗を買いたいと思って、地方空港の売店に行って「アメリカの国旗はありますか?」と英語で聞きました。“Do you have an American flag?” これが、私がその時使った英語です。アメリカ国旗なので American flag でいいだろうと思ったのです。ところが、売店の若いお姉さんの返事は「ここにはカエルは売っていない」でした。多分私の発音が悪くて flag が frog (カエル)に聞こえたのでしょう。それで、焦ってしまった私は、“No! an American flag!!” と何度も繰り返したのですが、全然分かってくれませんでした。日本人には L と R を区別して発音するのが難しいとよく言われます。まさにその通りでした。それにしても、向こうの人は、英語の苦手な外国人の発音を何とか理解しようという気持ちが全然ないようです。「空港ではカエルは売っていない」の一点張りで、もうこちらが根負けしました。「馬鹿な日本人がカエルはないかってしつこく聞いてきたよ」と後で仲間に話したに違いありません。今なら “the national flag of the United States” とか、 “the stars and stripes(星条旗)とか、もう少しましな言い方もできるのですが、当時の私には American flag ぐらいしか頭に浮かびませんでした。American というと、どちらかと言えばアメリカ大陸の、というようなニュアンスがあって、それで売店のお姉さんは「アメリカ大陸産のカエル」と思ったんでしょうね。
LとRの間違いについては笑い話がいくつもあって、昔エルビス・プレスリーが歌って大ヒットした「Love me tender (やさしく愛して)」は、日本人歌手が歌うと「Rob me tender (私からやさしく強奪して)」に聞こえるとか、ロシア人もこの L と R の区別が苦手で、旧ソ連邦の時代にソ連邦の航空会社エアロフロート社の旧式の旅客機に乗ると、機内アナウンスが「Please enjoy your flight (どうぞ飛行を楽しんでください) と言っているはずが、「Please enjoy your fright(どうぞ恐怖を楽しんで下さい)」と聞こえて、実際飛行機がボロでよく事故を起こしていたので「恐怖」が現実になった、というような本当かどうかわからないような話もあります。
朝の田舎道で、のんびり田んぼのカエルの声を素直に聞いていればいいものを、歳を取るとこんな「余分な思い」が頭をよぎりました。