わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

悲しいね この風景は かけません (宮城県 南三陸町 水彩スケッチ)

2014年7月

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仙台駅発のJR東日本の「震災復興支援 日帰りバスツアー」で宮城県南三陸町に行きました。バスツアー参加者は12名。JRの大型バスは広くて快適でした。ガイドさんは被災地に詳しい方で、目的地に着くまで、いろいろと予備知識を私達に下さいました。午前940分に仙台駅東口を出発して約1時間半、山がちなルートを走っていて急に海が見えてきたと思ったら、バスは午前11時半前に南三陸町に入ってきました。


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目の前にきれいな青空と海と湾が広がる一方、手前の陸地にはあの有名な「防災対策庁舎」といくつかの破壊された建物と新しく作られた建物が少しありますが、それ以外は何もありません。震度6弱の地震が襲った当日、この三階建の防災対策庁舎の二階では、遠藤未希さん(24歳)が防災無線で町民に大津波の襲来を告げていました。本人は30分間放送をし続け、最後は15メートルを超える津波にのまれて亡くなりました。この町は大地震・大津波が来る前は、海岸通りに商店が並ぶ賑やかな漁業の町だったようですが、地震津波で完全に壊滅しました。


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震災直後に町中に散乱していた瓦礫もほぼ除かれて、今見ると本当に何もない更地が広がっています。ところどころダンプカーが砂埃をあげて走っていて、山から運んできた土を下ろして地面を盛り上げています。他県からのダンプカーが多くて、道路事情に精通していないため、事故が絶えないそうです。地震で地盤が沈下したため、このように嵩上げ工事をしないと、あと何も建物がたたないので、このようにダンプカーが走り回っています。

 

海岸近くで一際目を引くのが初めに書いた「防災対策庁舎」です。この建物はコンクリートの壁面が剥がれて赤錆びた鉄骨だけが残り、かつての町の中心に寂しくポツンと立っています。防災対策庁舎の前には小さな川が流れており、それが海に注いでいます。この川も今はなんてことないただの川なのですが、被災前は多分、川面に多くの商店や家屋の影を写す存在感のある川だったのでしょう。海からの津波はこのような川をさかのぼり、また道路に沿って遡上していったようです。

 

バスは昼食のために南三陸のさんさん商店街に着きました。仮設の商店街です。ここで1時間ほど昼食とフリータイムでした。ここには小さな仮設の食堂や商店が集まっており、南三陸を訪れた人たちが食事や買い物を楽しんでいました。荒涼とした風景の中で、ここだけが活気がありました。丁度昔見た西部劇映画のなかにあった荒涼とした原野に現れる開拓者の町というイメージです。食事は海鮮丼やイクラ丼など、豪華です。地元の食材を活かした美味しい昼食でした。私が食べた海鮮丼は1900円で高いのですが(これがメニューのなかでは一番安いほうです)、被災地支援と思えばこれもOKです。

 
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昼食後、バスには地元のボランティアの女性が乗ってこられて、約1時間、バスで南三陸の中をゆっくり巡りながら丁寧に解説して下さいました。この女性もご自身が津波を体験し親しい友人を亡くしておられるようです。この方の説明では、南三陸町での死者は629名でまだ行方の分からない人が220名ほどおられるとのことでした。バスで南三陸の町が遠くに望める少し高い場所に来て、バスを降りて更に詳しい説明を聞きました。私は手帳に町の様子を軽く筆ペンでスケッチしました。時間の関係もありましたが、ちょっと、この町は悲しすぎて、水彩でスケッチする気になりません。ボランティアのガイドさんが繰り返し言われていたのは、「とにかく自分の身は自分で守る」ということでした。そのためには、日頃から避難の訓練が欠かせないそうです。それと関連して、この町の中学生や高校生たちは津波がすぐそこまで来ているのに、自分たちが一旦避難した高台から下に降りて行って近くの老人ホームの人たちを抱えて高台に上がって来たとか。多分日頃の訓練の成果でゆとりがあり、お年寄りを助けられる、と直感的に分かったんでしょうね。こんな勇気のある若い人たちがいる限り、日本は大丈夫です。ボランティアのガイドさんは、この震災以降は、必ず車に大きなボトルの水を2本いれておくことと、車のガソリンはいつも満タンにしておくことを心がけているそうです。「とにかく水があれば何とか命がつながります。汚い泥水は飲めませんから」、という彼女の言葉が響きました。

 
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この町では、おみやげに復興支援のタオルを2枚買いました。それと、高校生が作った南三陸支援の100円のバッジ。みんな復興支援にもっと色々売り出せばいいのに。ここの人たちは慎ましやかなんですね。

 

南三陸町の現状は、Google マップのストリートビューでよくわかります。宮城県南三陸町志津川で検索してみてください。私が見てきた風景とほぼ同じ風景が見えます。


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