わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

松島や ああ描(えが)けない 松島や! (宮城県 塩竈(しおがま)市・松島町 水彩スケッチ)

20147
 
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今日は津波を起こした海を自分の目で見てみたいと思い、塩竈(しおがま:塩釜とも書きます)に行きました。塩竈は仙台からJR仙石線30分ほどの町です。大きな港があり、魚の市場があり、松島への遊覧船も出ています。駅前の観光案内所で地図をもらい、塩竈で有名だという塩竈神社にまず参拝しました(申し訳ないのですが、実は私はこの神社を知りませんでした)。


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確かにこの神社の正面の石段はすばらしかったです。真っ直ぐに山の上まで綺麗に直線で続く石段です。後で考えたら、今日はまずここでスケッチをすべきでした。海の町に来たのに山の神社はスケッチしなくていいだろう、とつい考えてしまい、素晴らしい場所だったのにそのまま通り過ぎてしまいました。

 

神社からの道を下って、三陸汽船の創始者という人の旧宅が無料開放されていたので、そこに立ち寄りました。そこで、観光ガイドさんとお話していて、この塩竈神社よりもっと有名な神社が近くにあるというので、その神社、御釜(おかま)神社に参拝しました。御釜神社はその昔、奥の細道芭蕉が立ち寄った神社だそうです。古い建物の扉を開けると、中に4つの鉄製の御釜が祀られていて、その御釜の水は大雨でもなぜか御釜から溢れ出ることもなく、日照りが続いても御釜の中の水が枯れることもないそうです。水の色も時に変化し、普段は赤っぽい色が、震災前には突然透明になったとか。本当ですかね? 不思議ですね。思わず4つの釜を写真に撮ったら、「ここは神様の場所なので写真は本当はダメ」だとか。今回は何とか見逃してもらいました(ここではバチが当たると怖いので写真は載せません)。ガイドの男性が本当に一生懸命に釜の水のことを話されるので、「なるほど」と相槌をうっていたのですが、実際この前の津波の時にはどうだったのでしょう。この辺りも高さ2メートルぐらいの津波に浸かったらしいので、地面からの高さが20センチそこそこの4つの大きな御釜も当然水没したと思われるのですが、そこのところは私も遠慮して深くは追求しませんでした。ちなみにNHKの「家族に乾杯」の笑福亭鶴瓶さんもこの御釜を見ていったそうです。

 

「ついでに、本塩竈(ほんしおがま)駅の近くに震災と津波のあとが残った場所が沢山あるので、案内します」と、そのガイドさんが言われるので、お言葉に甘えて見せて頂きました。今でも津波が持ち込んだ泥を全く掃除しないで放置してある家屋やビルがありました。津波の到達した高さまで汚れたガラスをそのままにして、くっきりと津波の残したあとを見せるガラス戸も見せてもらいました。あちこちの家の基礎が陥没しています。更地のような空き地も沢山あります。しかし、震災後、破損がひどい家は国が無償で家屋の建て替えをしてくれたので、新しい家が増えているということでした。昨日見た仙台の近くの名取市で見た新しい家々と同じです。特に屋根がモダンで綺麗です。この地方では以前からそうだったのかどうか知りませんが、瓦葺の屋根は非常に少なく、スレートか金属のように見える新しい屋根の材料が使われています。家がどれもモダンなので、東北らしさがなく、申し訳ないのですが、まるで絵心がわきません。何か新興住宅地に迷い込んだような感じです。いやはや、被災地を絵にするのは実に難しいです。


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それならいっそ松島へ行ってみようという気持ちになり、正午発の遊覧船で松島に向かいました。船から見える海があの津波を引き起こした海だと思うと、複雑な気持ちです。松島は随分前に来たことがありますが、海の遊覧は初めてです。やはり日本三景というだけあって綺麗ですが、津波があったせいで何となく不気味で怖い海です。この海に比べると、私が住んでいる岡山の瀬戸内海は、実に明るくて穏やかで清々しい海です。島の美しさも松島に負けていません。全体のスケールも大きいです。

 
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松島遊覧を終わって、松島海岸に上陸し、すぐに瑞巌寺(ずいがんじ)に行きました。あいにく瑞巌寺は改修工事中でした。ここの境内の杉木立は大変立派です。これは絵になると思いましたが、人通りが多い参道にスケッチブックを広げられるような場所がなく、ちょっと道から外れてうろうろ場所をさがしているとお寺の関係者に注意されたりしたので、気持が萎縮し結局スケッチをあきらめました。杉の大木の木陰が涼しくてスケッチ向きだったのに、ここも逃してしまいました。

 
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仕方なくそのままJR松島海岸駅に行き、そこからJR電車に乗ってもう一度本塩竈(ほんしおがま)に帰り、再度スケッチ場所を探しましたが、猛烈な暑さで、結局スケッチ断念。塩竈の市立図書館に私の本を寄付するつもりもあって本塩竈駅に引き返したのですが、図書館に行ってみると本日休館。がっくり。

 

それなら海がもっと近くて船が描けそうな本塩竈の隣の東塩竈(ひがししおがま)へ行こうと、再度JR電車にひと駅乗って行ってみました。しかし、駅を降りるとそこはトラックの往来する国道と騒々しい港のまわりの工場の連続。とても港へ近づくのは無理とわかりました。


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うーん、今日は重たいイーゼルを片手に何度もスケッチを試みたのですが、どこでも結局絵を描く決心がつきませんでした。絵を描くにはかなりのエネルギーが要ります。今日は万歩計で見ると2万歩歩きまわったのですが、結局この暑さで歩き過ぎてかなり体力を消耗し、絵の方にエネルギーが向けられませんでした。こんな日もあります。これがツアーでない旅のいいところでもあり悪いところでもあります。自分で「ここを描きたい」と思える所に行き着くまでが一苦労です。

 

スケッチ一人旅。今流行の言葉で言えば、スケッチ「ぼっち旅」でしょうか。一人で悩んで一人で決断する。しかし、本当は「ぼっち」ではなくて、あちこちで思いがけない出会いがあります。これが一人旅の醍醐味です。しかし、今日は本当に疲れました!描いたのは松島の遊覧船でメモ帳に描いた小さな絵だけでした。我ながら情けない。芭蕉の有名な句がまた別の意味で身にしみます。松島や ああ松島や 松島や!


 
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