わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

震災の 復興進む 街と町 (宮城県仙台市・名取市水彩スケッチ)

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仙台に来ました。東日本大震災の後初めて訪れる東北です。2011年(平成23年)311日のあの大地震津波から3年半が過ぎました。なるべく早く東北に行きたいと思いながら、仕事が忙しくて実現せず、この3月に退職してやっと来ることが出来ました。仙台には震災前には仕事で何度か来たことがありましたが、今回来てみて、高層ビルも増えて、街が以前より都会的になっていると思いました。東北新幹線で東京を発つと、約1時間半で福島。そして福島からわずか20分で仙台です。途中通過した福島では、「ありがとう福島」の大きな文字が見えました。新幹線の車窓から見る福島は森と水田が見事に広がる美しい土地です。海もまた見事に綺麗だったことでしょう。しかし、大地震と大津波、そして原発事故。住み慣れた土地や我が家を捨てて強制的に避難させられている人たちが沢山いて、本当に気の毒です。新幹線の遠くに見える山々のその向こう側にあの福島の原発があるのだと思い、何とも言えず気持ちが重くなりました。
 
翌日、仙台に最も近い被災地である宮城県名取市へ行きました。JR東北線で仙台駅から10分ほど。仙台空港がある町です。実は、4月に私の作品展を倉敷で開いた時に、東京在住で震災復興に詳しい方とお話する機会があり、「被災地を見るならどこがいいですか?」と伺ったところ、「それは名取でしょう。あそこは津波で完全にやられましたから」という返事だったので、それが頭にあり、名取に行くことにしました。名取駅の駅舎は新しい駅舎でした。多分古い駅舎は地震で使えなくなったのでしょう。駅を降りると、まっすぐ道が伸びていますが、全体にだだっ広くて何もない感じの通りです。そして、町の多くの建物が駅舎同様新築です。一旦すべて更地にして(更地になって)家を立て直したような感じです。どの家も屋根が新しいのが特に目につきます。


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地図で探して市の図書館に行きました。町の中の、これもどちらかと言うと何もない更地のようなところに、木造のきれいな図書館がありました。初めこれが本当に図書館だろうか、と自分でも自信がもてないで近づいたのですが、やはり図書館でした。
 
中の若い職員の方たちは大変丁寧で、名取市の被災の写真集を見せてくださいとお願いしたところ、いくつか資料を見せて下さいました。私達が報道で知っているものよりも更に具体的ないろいろな写真が記録されていて、かなり衝撃をうけました。


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後で伺った話では、この図書館も地震で倒壊し、最近UNICEFとカナダ政府の支援でカナダの木材を使って再建されたとのことでした。それで日本の図書館とは思えない外観だったのです。図書館のベランダの椅子も木材でできているのですが、その年輪を数えてみると、樹齢200年ぐらいの木材を使っていることがわかりました。これもカナダからのプレゼントかな? すごいです。帰りに、私が出版したスケッチの本を図書館に1冊寄付したいと申し出たところ、こころよく受け取って下さいました。
 
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もう少し、津波の跡を見たいと思い、仙台空港に行きました。空港には地震津波の様子を示すビデオを見せるコーナーがあり、その他写真等の展示もありました。それを見たあとで、空港の展望デッキに行き、簡単に海の見える方向をスケッチしました。しかし、広い空港でその向こうは津波で何もかもなくなった地面がつづいているだけで、どうも絵にはなりません。震災の跡を絵にするというのは、実は結構大変なことだとわかりました。あまり「描きたい!」という気持ちがでてこないのです。どうも気持ちが乗らないのです。


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空港でお昼になったので、三陸ワカメとあさりのラーメンを食べて空港を後にし、仙台に戻って仙台市内を流れる広瀬川を描きました。今日は仙台も32.8度。暑くて暑くて、とても河原で絵を描ける状態ではなかったので、澱(よどみ)橋の下の日陰に入って描きました。それでも暑い! このまま続けると熱射病になるな、と思い、1時間半ほどで片付けました。広瀬川の向こうのこんもりとした木々の中に東北大学の建物が見えます。東北大の学生さんたち、キャンパスが青葉山にあるので気の毒です。暑さにうだりながら、坂道を歩いたり、自転車のペダルを苦しい顔でこいでいます。途中で自転車を降りて押しながら坂を登っている女子学生も沢山いました。


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私も暑くてやりきれなくてスケッチ道具をたたんで、喘ぎながらやっとの思いで東北大の近くの県立美術館の前のバス停に来て仙台駅行きバスを待ったのですが、バス停は学生さんの長い列。そしてバスは次々と来るのですが、すべて行先表示は「回送中」。「一体どうなってんの」、と思いながら待ってやっと来たバスに乗るとバスはすし詰め満員。そして夕方のラッシュ時間にぶつかりバスは市内で前に進まずのろのろ運転。バスの中はひどい熱気。この帰りのバスでとんでもなく疲れました。冬も寒い中で長時間バスを待つのは大変だと思います。


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見たところ、仙台の交通事情はどうもあまりよくないようです。東北大の学生さん達はこの点かわいそうです。この仙台という街は東北大の存在感が大きい街です。市域のかなりの部分を大学が占めています。東北大学は勿論日本有数の優れた大学ですが、もうちょっと学生さんたちが通学しやすい交通システムを考えてあげてはどうでしょうか。大学は駐車場スペースが多分限られているので、公共交通機関で通勤する教職員も困っているかもしれません。震災後は建物の補強は勿論ですが、このような市民の足の確保やシステムの改善も必要でしょう。よその街に来ると、いろいろなことが羨ましかったり、また逆にその街の欠点に気がついたりします。これも大事なことです。


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