わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

雨の中 絵を見に来たのは カラスだけ (富山県 立山山麓 水彩スケッチ)

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朝ホテルの窓のカーテンを開けると、ガスでかすんだ山の風景がありました。今日は一日雨です。朝食を食べ、8時半にホテルを出て、近くの屋根付き休憩所に向かいました。ここだと、雨がかからないし、ベンチがあるので、ゆっくり休みながらスケッチできます。昨日この場所でSMサイズで描いた山小屋風建物のならぶ風景を、今日はF6サイズの見開きで描きました。今日は月曜日でしかも雨なので、さすがに観光客はいません。絵を描いていて近寄ってくるのはギャラリーではなくカラスだけです。こういうのも自然がいっぱいでいいものです。広い場所でまわりに誰もいないので、今日は「ここは暗く」とか「ここは黄色」とか、思い切り独り言をいいながら、スケッチをしました。


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どんな場所でも、スケッチすると、忙しく歩きまわっていた時には分からない風景や人の営みに気が付きます。今日もそういう日でした。午前中2時間半のスケッチが終わって、絵を仕上げてから、絵の中央に描いた薪割りの作業所に行ってみました。そこでは地元の方が火を炊いてその傍らで薪割りをしておられました。私の方から話しかけると、手を休めて気さくに話をしてくれました。薪割りは県の失業対策事業なのだとか。夏の間、この地域でキャンプファイアーに使う薪を今から準備しているのだそうです。薪はあちこちに積み上げられていて、相当な数でした。この人を含めてこの町の人々は、普段は公園やスキー場の草刈り作業で富山市富山県から手当をもらって生活しているとのことでした。


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確かに、この町だと、林業と観光ぐらいしか他に生活の術は無さそうです。観光に関しては、昨日ウオーキングで出会った人の話と同じで、最近は観光客が少なくて困っているとのことでした。私が今泊まっているホテルも実は経営難で、今月半ばに営業停止だとか、なんと今回はそのぎりぎりのところでこのホテルに泊まれたことがわかりました。大きなホテルで施設も温泉も立派なにの、確かに宿泊客は非常に少ないです。いやはや、どこも大変です。地方の生き残り戦略、何とかしないと、本当に何年か後には観光業が衰退し、自治体が消滅しかねません。そして、この町も若者が少ないです。いるのは高齢者ばかりです。今朝のNHKニュースで登山ブームについてやっていましたが、華麗なファッションに身をつつんだ最近流行の「山ガール」なんて、ここでは見かけませんでした。皆、中高年の、かつて熱狂的に山に登った世代が懐かしくて再び山に登っている、といったところです。山ガールはきっと世界遺産になった富士山や東京の近くの高尾山あたりの話なのではないかと思ってしまいます。もっとも本格的な夏山シーズンはこれからなので、8月になって学校が休みになると、若い登山客も増えるのかもしれません。


お昼ご飯は、絵を描いた休憩所から見えるレストランに行きました。このレストラン、チキンカレー専門なのですが、こんなチキンカレーは初めてというぐらい、味は素晴らしかったです。何故か車がよく止まっているので、気になっていたのですが、入ってみて正解でした。ご夫婦でやっておられる店でしたが、羨ましいぐらい雰囲気のある建物ときれいな花が咲き乱れる庭が素晴らしかったです。カレーを食べ終わっって、記念にこのレストランをまた屋根付休憩所からスケッチしました。最後に、スケッチを終えてコーヒーを飲みにそのレストランに立ち寄り、私の描いた絵をお見せしました。


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今日は一日山の中でゆっくりしました。立山山麓、やはりゆっくり過ごすと素晴らしいところです。もっと天気がいいと、断然魅力的な場所になるのでしょうね。大型台風が近づいています。今週は日本中が大雨や強風に注意が必要です。

夕方、ホテルに戻って食事をとり、部屋のある6階に戻ると、今回の旅で実は最も感動的だった「立山の夕焼け」を見ることができました。風が強くゴウゴウと音がして、その風にのってガスが吹きあげてきます。山肌は日暮れで怖いほど真っ黒になって、それとは対照的に空は赤やピンクや黄色や青や、その他いろいろな色が混ざり合って、それがどんどん動きつづける雲に反射し、なんとも言えない素晴らしい光景でした。もし山の中でテントを張ってこの夕焼けを見ていたら、この自然の圧倒的な姿に、むしろ恐怖心を抱いたかもしれません。実際はしっかりした建物の中から窓を開けてこの夕景をみているのですが、それでも迫力満点でした。立山山麓に来てよかった、と最後の最後に思いました。

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