わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

ユゴー 『レ・ミゼラブル』

201312
 
レ・ミゼラブル』全5巻(新潮文庫版)を読みました。子供の頃から「少年少女世界文学全集」などで読んだことのある、おなじみの「ジャン・ヴァルジャン」の話です。最近は映画にもなり、またミュージカルは昔からロンドン、ニューヨーク、東京を始め、世界中で公演されています。子供の頃に読んだ本のストーリーから、だいたい内容をわかったつもりでいたのですが、今回、改めてすべてを読んでみて、やはりストーリーの面白さにのめり込み、またところどころに挟まれる歴史的背景の丁寧な解説にこの作家の歴史観や社会的知識のすごさを感じました。これは今から150年ほど前に出版された小説ですが、フランスの近代史やパリの街の様子、当時のフランスの社会の状態などがよくわかります。これを読みながら思ったことは、「人間の世界っていつの時代も変わらないなあ」ということです。社会のひずみを直そうとして革命を起こして戦う民衆、国家間の戦争で荒廃する国土と戦争に苦しむ民衆、スーパーヒーローの出現と没落(失脚)、富めるものや権力をもつ者と貧しい大衆との間の戦い、など、当時のパリの街の人々の姿や経験は、そのまま現在の世界のどこかの都市にも当てはまりそうです。

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レ・ミゼラブル」とは虐げられた人々という意味ですが、ユゴーは当時のフランス社会の中の人々の悲惨な生活や戦争を記述しながら、その中で、一度は罪をおかしながらもその罪の償いを続ける純粋でタフな主人公「ジャン・ヴァルジャン」の姿を生き生きと描いています。彼は鍛えられた体と何ものに屈しない不屈の精神のもち主で、次々と降りかかる困難を奇跡的に乗り越えます。最後は幸せな心境で死を迎えるのですが、最後にやっと幸せになって、自分が娘同然にかわいがってきたコゼットやその恋人マリウス(最後はコゼットと結婚します)など自分の一番愛する人たちに見守られて息を引き取る場面では、こちらもほっとして思わず涙が出てきます。最後に「ジャン・ヴァルジャン」は神に近い存在として描かれ、キリスト教的な愛のあふれるエンディングとなります。この話、何しろ全5巻もあるので、長いです。長いけれど、ストーリー展開が面白い。時間のある人はあっという間に読めるかもしれませんが、私は朝の通勤時間の15分を使って読み続けたので、時間がかかりました。全5巻を年内に読み終えることができて、その意味でもほっとしました。本当に誰にでも分かるいい小説です。今すぐパリに行ってみたくなります。
 
さて、来年はまず、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に挑戦します。引き続き日本と世界の古典文学に挑む予定です。