わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

台風が 私をこの町に 連れてきた (北海道 苫小牧市 水彩スケッチ)

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札幌への出張から戻るため、新千歳空港から羽田へ飛ぶ飛行機を予約していたのですが、丁度台風18号が昼前に関東地方に迫り、飛行機が運行中止となってしまいました。空港の大型テレビを見ると、京都の嵐山の桂川にかかる渡月橋が、とんでもない濁流に襲われていました。2年前、スケッチの場所として使わせてもらった屋根つきの休憩所もこの濁流の中です。本当に自然の力はすごいですね。新千歳は飛行機の変更やキャンセル待ちの人達で、これまた予想を超える人の列でした。23時間待たないと受付してもらえない絶望的な状況でしたが、列に並びながらも、運よくインターネットで予約変更に成功し、列から離れることができました。本当にやれやれです。交通機関の運行は特にそうですが、普段ちゃんと動いているシステムがいったん崩れると、もとに戻るのは大変です。結局、翌日夕方の飛行機しか予約が取れなかったので、今晩泊まるホテルを探すことになりました。しかし、インターネットで探しても、千歳付近にホテルの空室が見当たりません。仕方なく、千歳からそれほど離れていない苫小牧のホテルを予約しました。こういう時、パニックにならずに解決策を探せるかどうかで、人間の力が試される、としみじみ思いますね。そして、若い時は何でもないことが、歳を取ると難しくなります。
 
苫小牧は、札幌の南、太平洋に面した町で、大手の製紙会社が大きな存在感をもつ町です。JR苫小牧駅を降りると、製紙会社の工場と大煙突が目に入ります。町の中心には、この町に不釣り合いに思えるぐらいの立派な高層のホテルがありますが、そのホテルにもこの製紙会社の名前が入っています。台風が関東、東北を過ぎて北海道に達していたため、ただでさえ淋しい駅前通りには人の姿がなく、強い風が吹き、激しい雨が降っていました。考えてみると、北海道で台風に会うのは、生まれて初めてです。こんな経験も貴重です。普通、九州や四国、そして近畿地方で台風が大暴れしたあと、たいていの台風は、北海道までいってしまうと温帯低気圧に変わり、その怖さもたいしたことないだろうと思ってしまうのですが、北海道の台風の風の強さと雨の量は、意外と馬鹿に出来ないものでした。
 
翌朝は、台風一過のさわやかな青空が広がりました。朝5時半にホテルを抜け出して、この町の象徴である製紙工場の煙突をスケッチしました。工場からは絶えずモクモクと煙が上がっています。普通製紙工場というと、辺りに悪臭が漂っていると思い込んでいたのですが、意外と臭いは有りません。臭いを放出しない技術の開発がかなり進んだのでしょう。製紙工場が、以前に「山線」と町民から呼ばれ親しまれた鉄道をこの近くに敷いて、そこで走っていた蒸気機関車と客車が保存・展示されていました。



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朝食後、今度は白鳥アリーナに向かいました。ここはその大手製紙会社のアイスホッケーチームの本拠地です。大きなスケート場の建物の正面から中に入ると、リンクではチームが練習をしていました。練習であれ何であれ、アイスホッケーを生(なま)で見るのは初めてで、興奮しました。感心したのは、とにかく選手のスピードと、ゴールに向けての連係プレーと、球を打つ迫力です。これは本当にいいものを見せてもらいました。

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そのあと、歩いて港方向へ向かいました。途中に、中央公園や市民文化公園があるのですが、広い緑一面の公園で、うらやましく思いました。公園の近くの小学校の校庭も広いのですが、昨日の台風の大雨で校庭は一面の水浸しでした。真冬だと、これだけ水があれば凍って天然のスケート場になりそうな位広い校庭です。他の市内の小学校も見たのですが、どこも樹木が多く、敷地が広く、緑の草地が広がり、本当にうらやましい環境です。子供たちは伸び伸びと勉強できて幸せでしょう。



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昼食は苫小牧漁港に面した食堂で取りました。この食堂はそれほど大きくはないのですが、大変有名な食堂らしく、店の壁から天井まで、沢山の色紙で覆われていました。中には鳩山由紀夫元首相の色紙もありました。そう言えは、ここ苫小牧は北海道9区、鳩山さんの選挙区だったんですね。注文したのはホッキカレー。1000円。苫小牧名物のホッキ貝がたっぷりはいったカレーです。カレーの味そのものは、貝のカレーというものに慣れていないので、まあこんなもんかな、コリコリしてるなあ、というくらいの印象でしたが、何しろご飯の量が多かったですね。店の壁に貼ってあった週刊誌の切り抜きの記事によると、ここはそもそも、早朝、漁に出かけて思い切り働いて、空腹で港に戻ってきた漁師さんが来る店だそうで、とにかくご飯の量が大事なようです。店の入り口にも、「一般のお客さんもOKですが、漁師さん優先です」、と看板がでていました。しかし、味の評判を聞きつけて、御昼時には、店の前には一般客の長い行列ができていました。もし列の最後尾にいたら、1時間ぐらいは待ったかもしれません。この日は幸い11時頃にこの店にきたので、15分ほど待っただけですみました。

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食事を取って、歩いてJR苫小牧駅に引き返し、電車に乗って新千歳に向かいました。昨日とうって変わって、青空の広がるさわやかな天気です。登場手続きも、昨日の飛行機の運航中止証明書の発行もスムーズに終わりました。やっと帰れる、とほっとした気持ちになりました。空港の展望デッキで、ひっきりなしに離着陸する飛行機を眺めながら、ゆたっりした気分で、夕方まで、帰りの便の出発を待ちました。

 
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