わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

伊予柑くん 島のことばで しゃべってよ (愛媛県今治市 来島海峡大橋水彩スケッチ)

20135

 

バススケッチに参加し、広島県尾道からしまなみ海道を渡り、愛媛県来島海峡大橋がみえる道の駅、「よしうみいきいき館」に来ました。今日は朝ポツリポツリと雨、そして午後遅くになって、ゆっくりと天気が回復しました。しかし、来島海峡大橋の見える場所にバスが着いた午前11時頃は、来島海峡一帯はちょうど濃霧の中。橋も島も、少し離れると白くかすんでよく見えません。これが瀬戸内特有の「濃霧」です。四国に車でドライブに行くときには、時としてこのように本四連絡橋の上で霧に覆われ、視界が極端に下がって運転に不安をおぼえることがあります。かつて連絡船時代も、濃霧の影響をしばしば受け、昭和30年代の有名な紫雲丸(しうんまる)事件のときのように、濃霧の中、連絡船が他の船と衝突することもありました。


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しかし今日は、気温は適度に高く、また、霧で初夏の強い日射がさえぎられて、スケッチには最適でした。もうすこし、海や空や島々がくっきり見えたら最高だったのですが、講師の先生もバスの中でおっっしゃっていたように、その時その時の気象条件を受け入れて、その日しか描けない絵を描けばよいと思います。これが現場でスケッチする面白さです。いつもきまって晴天だと、逆に面白くないですよね。


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今日のギャラリーは小学5年生の「伊予柑くん」。地元の子で、私が絵を描き始めると、どこからともなく現れて、私の筆絵の動きを見ていました。伊予柑みたいなまん丸い顔をした小太りの少年です。「おじさん、絵を描いているんですか?」と伊予柑くん。予想外のきれいな標準語で丁寧に質問です。「ああ、そうだよ」と私。「僕も絵がうまい方なんですよ。もう小学校で10個ぐらい賞状をもらいました」。「えー! 本当! すごいね。じゃ、おじさんと絵を一緒に描こうよ」。伊予柑くん、ちょっと言葉につまって、「残念なんですが、僕、今、お勉強が忙しいんです」。「ほお、お勉強ねえ」。「また、あと出会えると思います。ぼく、ちょっと向こうの方を見てきます」。そう言い残して、彼は私のスケッチ仲間の方へ移動していきました。


しばらく私が熱中して絵の下書きを描いていると、伊予柑くん、また突然現れて、「おじさん、僕と写真写ってくれますか?」と私と並んで自分の携帯電話を目の前に差出ました。確かに、携帯には伊予柑くんと私が写っています。少年が差し出したおもちゃのような携帯に見とれているうちに、伊予柑くんの「はいチーズ」の声に乗せられて、Vサインで写真に写ってしまいました。彼は、こうして、やって来る観光客と一緒に写真を撮るのが趣味らしいのです。「君、もう勉強がいそがしいんじゃないの?」と聞くと、「いえ、もう終わりました」とアッサリした答え。「えええ?もう終わったの?」。伊予柑くんは、その後も、私のそばにいて、「ああ、そうゆうふうに描くんですね」とか「そうゆう手ですか」などと生意気な口を挟みます。


そのうち、彼もいなくなり、私も2時間半ほどのスケッチが終わってスケッチ道具を片付け始めていると、ふたたび伊予柑くんが、小さな愛犬をつれて登場。犬のことなどしばらく話をして、犬がすこし離れた場所のテトラポットの下の砂地に頭を突っこんで遊び始めたので、「それじゃあまたね」と私。「またお会いできるといいですね。きっとまたお会いできますね」と手を振る伊予柑くん。えらく丁寧な子だなあと、感心しながら、「しっかり勉強するんだよ」と手を振ってこたえる私。


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今日は、絵を描きながら地元の島の少年といい会話ができました。欲をいわせてもらえるなら、伊予柑くん、地元の伊予の島言葉で、おじさんに話してほしかったな。多分、担任の先生から、「他の人と話すときは、きれいな標準語を使いなさい」、と教えられているのでしょうか。地方の文化の保存・維持のためには、まず方言の保存・維持からはじめなければいけないと思います。伊予言葉のほうが、絶対にいいです。全国の小中学校の先生方、方言を大事にする教育を子供たちにもっと進めてください。



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