わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

知多半島 やきもの散歩 土管(どかん)坂 (愛知県常滑市 やきもの散歩道 水彩スケッチ)

201210

 

焼き物の町、常滑(とこなめ)市にやってきました。名古屋から名鉄空港線で終点の中部国際空港駅の二つ手前、常滑駅で下車します。よその土地の人がここに来ると常滑という漢字を「とこなめ」とは、とっさには読めないかもしれませんね。慣れないとちょっと読みづらい地名ですが、また、一度聞くと忘れられない響きをもつ地名でもあります。ここは1,000年続く有名な焼き物の産地です。駅の観光案内で地図を頂き、駅から500メートルの距離にある散歩道について丁寧なガイドを受けたのち、いざ出発。途中の道は、「とこなめ招き猫通り」と名付けられ、道路横の法(のり)面に様々な招き猫の作品が埋め込まれていて、訪れる人を楽しませてくれます。常滑は日本一の招き猫の生産地で、日本全国の招き猫の8割をここで作っているのだそうです。


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それらの面白い招き猫作品を楽しんでいるうちに、あっという間に「やきもの散歩道」の入り口、陶磁器会館に到着しました。まず何よりスケッチ場所を探そう、とA,Bの二つの散歩コースのうち、距離の短いAコースでスタート。するといきなり道の横に土管の列、また土管を埋め込んだ実にユニークな土留(どどめ)が現れます。


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このコースの素晴らしいのは、道標に番号がついていて、そのまま番号をたどれば、安心してコースを回れることです。そしてさらに素晴らしいのは、散歩道が変化に富んでいて、飽きないことです。次々に工房が現れます。それらに引っかかっているとスケッチが出来ないので、工房に入りたい気持ちを抑えてひたすら小道を歩きます。途中、土管坂(どかんざか)なる場所も現れて、そのユニークさに思わず笑ってしまいました。あちこちに窯があり、煙突が立ち、まさにスケッチにもってこいの場所です。そして、私の旅では珍しく同業者、つまりスケッチをする人、に4人も出会いました。やはり、そういう人に出会うとつい声をかけてしまいますね。



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 コースを半分回ったあたりにある登り窯は10本の煙突が並んでいて、やはり迫力がありましたね。またそこから少し歩いて、煙突と工房がちょうどいい具合に画面に入りそうな場所を見つけて、スケッチを開始しました。赤レンガの煙突には赤いツタがからみついていたのですが、ツタは面倒なので画面の上では省略。午後の日差しで、やや影が深くなった煙突と近くの建物とを描きました。



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 1時間半ほどでスケッチを終えて、近くにあった手作りパン屋さんで、焼き立てのパンを買って早めの夕食です。パンはカレーパン、パンプキン(カボチャ)パン、それにアンパンです。それとグレープフルーツジュース。塗ったばかりの絵の具がよく乾くように、スケッチブックを、店の外に並べられた机の一つに広げて、ゆったりした気分でパンを頬張りました。多分お米の粉を使っているのでしょう、もちもちした食感の大変おいしいパンでした。まさに至福の時です。


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 それから歩いてさらにコースを周り、夕暮れが近づく散歩道をたどりました。途中、カンナが沢山咲いている場所にきました。背景に煙突がそびえていて、何とも言えない景色です。私はカンナの花が好きです。カンナを見ると、若くして世を去ったデッサンの天才、村山槐多(むらやまかいた)の水彩画「カンナと少女」をいつも思い出します。槐多の描いたカンナの花が真っ赤で、それを映したように少女の顔も真っ赤で、庭も真っ赤で、モデルとなった隣家の少女は「私の顔はこんなに赤くない」と怒ったとか。暗い赤が好きだった村山槐多らしい絵です。私もいつかゆっくり、カンナをいれた風景画を描きたいな、と思いながら、その場所を去りました。


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 常滑の「やきもの散歩道」は素晴らしいです。焼き物が好きでも嫌いでも、なにか懐かしい感じのする風景と雰囲気です。招き猫とか土管とか、なにか気取らないものを焼いているこの町にも、好感をおぼえました。


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