わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(川上和人著、新潮文庫)

2022年10月4日

 

 

鳥類学者の著者が楽しく鳥について語ってくれる本です。著者は森林総合研究所という

国の研究機関に勤めています。本書は、鳥類学とは何か、どんな鳥を研究しているのか、どうやって研究しているのか、どこで研究しているのか、など、多くの疑問に答えてくれる一般向け入門書。ただし、堅苦しい話は一切ありません。大阪人らしく、初めから終わりまで、ユーモアに満ちた語り口。このユーモアの度が過ぎて、私などやや鬱陶しさも感じるほどの読者へのサービスです。

 

いわゆる動物生態学者と呼ばれる人たちは、皆独特の雰囲気をもっています。フィールドで研究をするので体力に自信のある人が多く、日に焼けてエネルギッシュな風貌です。野外で生活に慣れていて、体力だけでなく、意志も気力も強靭です。そんな羨ましいほどの能力を備えた人たちの現場での研究の姿が、この文章のなかに映し出されます。

 

著者が主に調査している東京都の離島小笠原諸島。私もいつか行ってみたいと思っていましたが、このコロナ禍では無理でしょう。しかし、本書を読んで実際に行った気分になりました。ついでに最近テレビでよく見る海底火山の噴火できた新島西之島での鳥類研究の話も面白かった。

 

このような研究者の、実は地味で地道な研究の連続の毎日にあこがれて、若い人たちが科学の世界にはいってくれることを願っています。日本の基礎科学は現在ハッキリ言って衰退期にあります。大学や大学院に行っても研究職につける可能性はかなり低いのが現実ですが、それでもその狭き門をめざして挑戦して欲しいと思います。この本はそんなことを考えるきっかけを与えてくれるかもしれません。

 

今日の俳句

「初鴨や煙の上る耕作地」