露草
2022年8月21日
「つゆ草や山裾までも雲の中」
今日の季語は「露草」。秋の季語だ。『今はじめる人のための俳句歳時記』(角川ソフィア文庫)で「露草」を見た。
「繁殖力旺盛で、道端や小流れのほとりなどに群生する。茎が地を這うようにしてひろがり、茎が分かれて上部は斜めに立ち、たくさんの葉と花をつける。早朝、露をふくんで咲く瑠璃色の花は可憐な美しさがある。」
ツユクサはツユクサ科・ツユクサ属の一年生植物。花は朝咲き、昼にしぼむ。この時期、朝の散歩道でたくさん目にする。ツユクサの花弁は午後には溶けて、それは次の花の準備に使われるらしい。リサイクルの花と言われている。野草の力強さを感じる。
「露草」を季語にした句をいくつか紹介する。
「露草や淋しくなれば泣きもする」 星野立子
「露草の葉に露草の涙かな」 西村和子
「露草を震わせ手折る山の朝」 高澤良一
「つゆ草の中にむすばん小き庵」 中勘助
「露草や分銅つまむピンセット」 小川軽舟
第1句。露草は可憐でロマンチックな印象で詠まれる。第2句も同じだ。露が涙のイメージなのか。露草を繰り返すリフレインが効いている。第3句。誰でも露草を見ると摘みたくなる。摘むと花がハラハラと落ちる。その花の可憐さが伝わる。第4句。寺田寅彦の句。ここでも露のリフレイン。現場が目に浮かぶ。第5句は中勘助の句。あの名作『銀の匙』を書いた中勘助がこんな句を残していたとは感激だ。やさしい句だ。最後の句。小川軽舟。現代の俳句界のリーダーの一人。理科の実験室で詠んだのか。確かに露草は理科の生物実験の材料になる。ちょっと目立つ句だ。二つの異質の要素の「取り合わせ」の妙。
もういちど今度、朝の散歩餅でじっくり露草を眺めてみたい。