わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『巨匠に学ぶ配色の基本 名画はなぜ名画なのか?』(視覚デザイン研究所)

2022年4月21日

 

 

今、私達の水彩スケッチグループの作品展を開催中です。広いギャラリーの中で離れた位置から静かに自分の描いた作品を眺めるというのは1年に1度あるかないかの貴重な時間です。他の人達の絵とも比較しながら、これでよかったのだろうかとか、次はどうしようかとか、いろいろな思いが頭の中を巡ります。

 

この時期、普段はほとんど開くことがない絵の技術書にも目が向きます。専門家は何を言っているのだろうと気になります。今日はたまたま本箱の中で目に止まった本書『巨匠に学ぶ配色の基本 名画はなぜ名画なのか?』を開きました。

 

絵は構図と配色で決まります。風景画の場合、現場でかなり歩き回って自分の描きたいモチーフを探します。そして構図を決めて鉛筆で下書きを始め、下書きをある程度済ませたら次は彩色に進みます。このあたりからどんどん描き手の個性が出ます。現実の風景を見ながら画面にどんな色を置くか。一人ひとりやり方が違います。それがとても面白いのです。絵の中にその人の性格、感情、人生観などがくっきりと現れます。その時の天候や描き手の体調ももちろん出ます。

 

明るい、暗い、派手、地味、活気がある、おとなしい、くっきりしている、ぼんやりしている、などなど色々な要素が絵の中にあって、それを眺めているだけで刺激を受けます。そういうわけなので、絵を発表するというのはまさに自分自身を人目にさらすということに他なりません。勇気も要りますが、慣れてくるとそれが快感にもなります。描いた人と見る人の間で、言葉を介さないコミュニケーションが生まれます。

 

こんな大事な作品なので、描き手としてはできるだけ自分の本当の姿を伝えたいという思いになります。そのためには、できるだけ巨匠や先人の名画を見て、伝える力を身につけようということになります。本書はそんな数ある名画鑑賞のガイドブックの一つです。130ページほどの中に西洋と日本の名画が多数取り上げられ、その一つひとつについて配色という視点からユニークな分析がなされています。ページごとにポイントが端的に示されていて、なかなか参考になります。