南太平洋
2022年1月19日
南太平洋の火山爆発のニュースを聞いて、頭に浮かんだ文章があります。『ぼんやりの時間』(辰濃和男著、岩波新書)の「はじめに」の一文です。
若い頃朝日新聞の社会部記者だった辰濃さんが上司の命により南太平洋の島々(サモア、タヒチなど)の取材に出かけ、そこで生涯忘れられない「若緑色の礁湖(しょうこ)(ラグーン)」の風景に出会います。
その時辰濃さんは次のような冗談話を聞きました(よく知られた話だそうです)。
あるサモア人が忙しく働く日本人商社員に「なぜあなたたちはそんなに忙しそうに働き続けるのかね」と聞きます。日本人の答えは、「うんと働いて、昇進して、給料をたくさんもらって、いずれきれいな海辺に別荘を建てて、そこでのんびり昼寝をしたい」でした。サモア人は、「おれたちは、いまここで、もうゆっくり昼寝をしているがね」と答えます。
毎日働きづめの日本人への皮肉です。
辰濃さんは、この本でぼんやりすることの大切さを読者に語ります。私の一番の愛読書です。人生でぼんやりの時間を楽しんだ人たちの経験談が詰まっています。
火山爆発の被害にあった南太平洋の美しい島国トンガへ、国際的な救援の手が早く届くことを祈っています。
今日のスケッチ
ホワイトワトソン紙 F2
鉛筆とシュミンケ固形水彩絵の具