わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『老い楽のすゝめ』(日ノ下文彦著、文芸社)

2021年9月15日

 

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長年腎臓内科医として活躍する著者が、専門の腎臓の話を中心に、健康に暮らす秘訣を一般の人にわかりやすく紹介した本です。朝日新聞の紹介記事を見て興味を持ちました。加齢とともに、人間の臓器はその機能を低下させていきますが、なるべくその機能低下を防ぐにはどのようなことに気をつければよいかが書かれています。かなり一般に認識されている様々な事実に加えて、専門分野からの意外なアドバイスもあり、とても参考になりました。そして、新型コロナの問題も取り上げられていて、紹介されているデータが最新の知見に基ずいていることも嬉しいです。以下、私が「ええー!?」と思い、「そうなんだ」と納得した点を抜き書きします。

 

  • 若いうちから意識的に野菜、果物を摂る習慣を身につけておきたい。ただ、塩分(主体はナトリウム)の排泄を促し血圧を上昇させにくいという意味で、カリウムが多い緑色野菜や果物は健康的なのだが、腎不全の患者には大敵となる。というのも、腎機能低下があるとカリウムをうまく尿中に排泄できなくなり、大量のカリウム摂取により血液中のカリウムが上昇する。ところが、カリウムは心臓毒であるため、極端に上昇すると致命的な不整脈が生じて、命に関わる可能性が出てくるので要注意なのだ。

 

  • ふと思い立ったら躊躇なく人間ドックを受けるべきで、シルバーエイジに至るまで毎年人間ドックを継続すると安心である。ある一定の年齢、例えば五十歳から人間ドックを始めたら、毎年続けたらいいと思う。七十歳になっても八十歳になっても受けたらいいのである。定期的に「健康管理をする」「病気の予防を心がける」ということが「老い楽」にはとても重要であり、人間ドックはまさにそのコンセプトを実践していることになる。

 

(私はまさに五十歳から七十歳まで毎年人間ドックを受けてきたのですが、このコロナ禍で昨年はパス。今年ももういいかと考えていたところでした。本書を読んでちょっと気が変わりました。やはり今年は受診することにします。)

 

  • 高齢者は猛暑に弱く、夏に衰弱しやすいと言える。老化を進ませないためには夏をどう上手に乗り切るかという問題になる。それならば、答えは簡単だ。暑さ対策をしっかりすればいい。暑い夏の期間を、体を衰弱させずに上手に乗り切るかどうかで老化の進展具合が変わってくる。

 

  • 腎臓は他の臓器に比べても加齢に伴い機能が低下しやすい。腎機能を維持しようと努めることは、すなわち体全体(他の諸臓器)の健康管理につながるし、老化の抑制にも役立つ。腎臓は「血液が流れ込んでなんぼの臓器」である。つまり、腎臓は年三百六十五日休みなく血液をろ過しているわけだから、腎血流が維持されなければうまく機能しないのは当たり前だ。1日1リットル以上の飲水が必要で、三回の食事時にこまめにお茶や水を飲むのがよい。「食物を口に運び、嚥下したら飲む!」を繰り返せばよい。

 

(そこまで水を飲むのか・・・!!)

 

 

  • さらに腎臓を護るには血圧管理も重要だ。腎臓は血圧調節臓器であるから、腎機能が低下し始めると血圧をコントロールできなくなり、高血圧に陥りやすい。逆に、血圧上昇を放置すると腎臓を傷めて腎機能がますます悪くなる。すなわち、腎障害と高血圧の間で悪循環が生じる。しかし、これはいくらでも断ち切ることが可能だ。特に、血圧上昇の要因の一つは過剰な食塩摂取にあるわけだから、まず減塩を心がければいい。また、今はいろいろな降圧剤があるので、患者の臨床状況や合併症、血圧の程度に合わせて薬で血圧のコントロールが可能である。高血圧を甘くみて治療しないと、ゆくゆくは腎機能が低下するので、これは未然に防ぐ必要がある。

 

(私は幸いまだ高血圧ではないと思う。)

 

  • 肥満や高脂血症脂質異常症)も腎障害につながりかねないので要注意だ。特に女性の高脂血症で注意してほしいのが、ケーキやチョコレートなどの洋菓子好きと、ヨーグルト、チーズなどの乳製品好きである。

 

(実は私もこれらの食品が大好きです。ヨーグルトとチーズは毎日食べています。幸いまだ高脂血症にはなっていませんが。)

 

  • 腎機能は二十歳で100%と仮定すると、八十歳になったときには50%以下である。

 

(わあ、もうだいぶ落ちてるなあ)

 

そして、本書を読み進み、後半の第7章〜第10章を読むと、専門領域を超えてこの著者が現在の日本に対して抱いている思いと未来の日本社会に寄せている期待が分かってきます。それらはいずれも私が共感をおぼえられる内容です。本書は全体に理解しやすく、頑張れば1日で読める内容なので、時間がある時に繰り返し読み、また、家族にも勧めたいとおもいます。