わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『わたしたちに手を出すな』(ウィリアム・ボイル著、鈴木美朋訳、文春文庫)

2021年9月13日

 

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私の読書歴に新たな1ページを加えた本、と書くとやや大げさですが、こんなサスペンス・アクション小説に殆んど縁がなかった私には、かなりショッキングな内容でした。ニューヨーク下町でのマフィアの抗争がからむ殺人とバイオレンスの世界。しかし、究極のテーマは女性、それも高齢の女性、の友情と強さです。原題は“A friend is a Gift you Give Yourself” (友人はあなた自身への贈り物)。文章は全て現在形で書かれています。それが何とも言えぬ臨場感と現在進行中の切迫感をかもしだしています。そして翻訳された文章、うまいなあと感心しました。こんな小説の翻訳するのにはもちろん確かな才能が要りますが、翻訳作業、楽しいだろうなあ。この本、翻訳者の貢献が大きいなあ。これが最初読み始めたときの感想です。

 

初めにいきなり殺人シーンが続きます。サスペンス小説だからこれが普通なのでしょう。私のような70歳過ぎた老人にはちょっと刺激が大きすぎると思いながら読みました。そしてカーチェイス。怖い男に追われます。迫力があります。ニューヨークとその周辺の道路を猛スピードで走るその疑似体験。フィクションならではの体験です。この本は全体にニューヨークの街案内・道路案内のような雰囲気もあります。ニューヨークにあまり馴染みのない私にも、この街の雰囲気がよく伝わりました。昨日は、田舎道を車の運転をしていて、この小説を思い出してついスピードを上げたくなりました。危ない危ない!

 

マフィアは怖そうですね。銃社会アメリカだから、この本に書かれているようなことは、あながちフィクションとは言えない現実味があります。この小説に出てくるアメリカ人のさまざまな年齢の男と女。どの人物の個性も容易にイメージできます。やはり作者の描写力・表現力がすごいのです。主な登場人物が変わるごとに、その人の名前をサブタイトルにして物語の場面をパッパッと切り替える、その手法にも感心しました。

 

ストーリはあえて書きませんが、最後の最後までどうなるのかわからない小説です。面白い読書体験ができました。