わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

アニメ『この世界の片隅に』を観て

2021年8月15日

 

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今日は終戦記念日。1945年8月15日に太平洋戦争での日本の敗戦が決まってから76年目の日です。今日はアニメ『この世界の片隅に』のビデオをアマゾン・プライムビデオで観ました。名作と評価の高いこのアニメを観るのは今回が初めてです。

 

この作品は2016年の冬に公開されました。その頃、広島市内の映画館で公開記念の上映会があるのを知って、岡山から近いので是非広島市で観てみたいと思っていましたが、席の予約が取れず果たせませんでした。そしてその後延びのびになり、やっと今日この作品を観る日が来ました(観るなら是非終戦記念日に、とおもっていました)。

 

主人公のすずさん。広島市南端の海岸の生れ。絵の好きな少女でした。広島では、今は原爆ドームとなった被爆前の広島県産業奨励館や広島の街などもスケッチしました。昭和19年、18歳で呉に嫁ぎ、周作とその家族との生活を始めました。嫁ぎ先で苦労するのかなと心配しましたが(確かに最初は色々とまどうことが多かったのですが)、夫の周作に大事にされ、義理の父母もやさしく、幸せな結婚生活を送るという設定でホッとしました。やがて昭和20年3月になると、米軍の呉空襲が激化し、戦争の悲惨さを味わい始めます。すずさん自身も6月の空襲で右手を失うことになります(好きな絵が描けないのは悲しかったでしょうね)。

 

そして迎える昭和20年8月6日8時15分。閃光と爆風に驚いて呉の家から飛び出して、広島方面の空を見上げると原子爆弾の巨大なきのこ雲。この作品では、広島の被爆については、被爆後の街の廃墟を象徴的に描くだけで、詳しい描写はありません。しかし、その悲惨さは十分伝わります。

 

この物語は悲しい展開で終わるのかな、と初めに思ったのですが、最後は希望につながるエンデイングでした。原爆ドームの見える橋の上で、廃墟となった広島の街を背景に、すずさんが夫の周作に「この世界の片隅に・・・」とさりげなく語りかけるシーンには思わず涙を誘われます。それでも、すずさんも他の人達も皆全体に明るい。敗戦の惨めさはなく、立ち上がる日本の国民の強さも感じられます。すずさんの姿、多分当時の日本のどこにでもいた日本女性を描いているのでしょう。

 

戦後76年。次の世代に戦争の悲惨さ、無意味さを伝えるのがとても大事ですが、『この世界の片隅に』のような優れた作品は、多分若い人たちも受け入れやすいとおもいます。戦時中の広島や呉の街の描写、周りの瀬戸内海を含む風景の描写、登場人物の性格描写、おだやかな広島弁、どれをとってもとてもよく作られています。広島へも呉へもこれまで何度も行きました。また今度行く機会があれば、この作品を思い出して、私もすずさんのように平和な広島や呉や瀬戸内海をスケッチしたいと思います。