わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』(堀川惠子著、講談社)

2022年4月12日

 

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日清戦争以降の日本の過去の戦争を、海の輸送基地であった宇品港(広島市)とそこに関わった人々(軍人、船舶輸送関係者)の視点で捉えたノンフィクションです。ロシアのウクライナ侵攻が毎日ニュースで伝えられる中、戦争についてもう一度考えてみる良い機会となりました。

 

本書が今年の第48回大佛次郎賞を受賞したと聞いた時、是非読んでみたいと思いました。私は広島の宇品港には行ったことはありませんが、以前から是非一度行かねばと思っていました。13年前に85歳で亡くなった父が、戦時中、陸軍で宇品港に滞在していたからです。当時どのような任務に関わっていたのかなど、戦時中のことは全く家族には話してくれず、こちらもあえて聞きませんでした。ただ、昭和20年8月に広島に原爆が投下されるまでは、一人乗りの小型艇で敵に特攻するための訓練・準備と補給作業をしていたとちらと話したことがありました。父は当時22歳。福井県出身。陸軍少尉でした。原爆投下直後、無傷の宇品港から部隊を引き連れて広島市内に被爆者救援に出かけ、2次被爆しました。その頃の様子をいつか知りたいと願っていましたが、思いがけず本書で詳細が分かりました。

 

日本は太平洋戦争では戦域を中国大陸、朝鮮半島、フィリピン、インドシナ半島、そしてはるか南太平洋まで広げ、部隊を次々と送り込みました。しかし戦力が劣る中、海上輸送による物資や食糧の輸送が思い通りに行かず、多くの兵士が戦死ではなく餓死するという悲惨な戦争でした。十分な準備がない中で、なぜそのような無謀な戦争に突き進んだのか。そもそも戦争の大義とは何だったのか。戦争によって兵士や輸送の船員、そしてアジアの人々や日本国民に何が起きたのか、もういちど振り返るよい機会になりました。

 

本書は、個人の記録を含めて詳細な戦争の記録を丹念に調査し、戦争の実相を浮かび上がらせる力作だと思います。若い人たちが是非こういう本をしっかり読んで、過去の日本の戦争の歴史を学び、現在の世界の戦争について考えて欲しいと思います。