わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 『舟を編む』(三浦しをん著、光文社)

2021年3月28日

 

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世の中の辞書好きの人におすすめの一冊です。辞書の編集に人生をかける人々を描いて、2012年第9回本屋大賞第1位に輝きました。

 

この本は、出版当時の評判ですぐに買って読み、辞書好きだったせいもあってすぐに物語に引き込まれました。読みながら、登場人物と一緒に辞書の編集の現場に立っているような、そんな臨場感を味わいました。あれからもう10年の年月が過ぎて、ストーリーの細かい内容は忘れてしまっていましたが、また再びあの爽やかな感動に浸りたいと、今回もう一度読んでみました。

 

私の現役時代の仕事は、特に50歳代からはデスクワークが多かったので、辞書にはずいぶんお世話になりました。退職した今も辞書は離せません。このブログの文章を書くときにも、三省堂の『新明解国語辞典』の第6版が机の上にありますし、岩波書店の『広辞苑』第7版もすぐ手の届く場所にあります。手っ取り早くインターネット辞書も使います。これらの辞書は、それぞれの出版社の辞書編集部で膨大な時間と労力をかけてつくられているのは間違いないのですが、普段はそんなことに気をかける時間がありません。しかし、何かの折にふと辞書の序文やあとがきを読むことがあると、控えめな記述の中に、辞書作成に関わった人々の熱い思いが込められていることに気がつきます。そんな辞書編集者の姿を読者に見せてくれるのが、この三浦しをんさんの本です。

 

今回も一気に読みました。登場人物の努力と、その努力が報われた後の栄光を描くのがこの作者の作風でしょうか。以前に読んだ『風が強く吹いている』でも箱根駅伝に参加する大学チームの努力と栄光を描いていて感動しましたが(以来、箱根駅伝を見る目が変わりました)、今回の本書再読後も、とても爽やかな幸せな気持ちになりました。やはり努力はいいな・・・と感じさせられます。現実にはない作り話なのですが、これを読んで幸せな気分になり、自分も努力したいなあと思う。いくつになっても、たとえ私のような高齢者でもまだまだ努力はいるなあと思わせてくれる。小説の力はすごいですね。