わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんな本読んだことありますか? 『いわずにおれない』(まど・みちお著、集英社be文庫)

2021年1月9日

 

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まど・みちおさんは、山口県徳山市(現・周南市)生まれの詩人(1909年—2014年、104歳で死去)。「ぞうさん ぞうさん おはながながいのね」、「しろやぎさんから おてがみついた」、「1ねんせいになったら」などの童謡の作詞者として有名です。本書『いわずにおれない』は、まどさんへのインタビューをもとに書き起こされたもので、これを読むと、まど・みちおという詩人の人物像・考え方・生き方がよく分かります。

 

本の目次が、まど・みちおさんの自然観・世界観・人生観をそのままあらわしています。

第一章 ぼくがボクでいられる喜び

第二章 一匹のアリ、一輪のタンポポにも個性がある

第三章 身近にある物たちも、いのちのお母さん

第四章 宇宙の永遠の中、みんな「今ここ」を生きている

第五章 言葉で遊ぶと心が自由になる

第六章 体って不思議。老いだって面白い

第七章 生かされていることに感謝

 

詩はほとんどひらがなだけで書かれた短いもの。読むとすっと心に入ってきます。まどさんによれば、詩はどのように読んでもいいのだそうです。詩がうまれてくる原因は一つじゃなく、無数の原因があって生まれるので、その解釈も自由だそうです。

 

第一章に出てくる「ノミ」という詩

 

すばらしいことが

あるもんだ

ノミが

ノミだったとは

 

ゾウではなかったとは

 

 

続いて「ぼくが ここに」という詩

 

ぼくが ここに いるとき

ほかの どんなものも

ぼくに かさなって

ここに いることは できない

 

もしも ゾウが ここに いるならば

そのゾウだけ

マメが いるならば

その一つぶの マメだけ

しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは

こんなに だいじに 

まもられているのだ

どんなものが どんなところに

いるときにも

 

その「いること」こそが

なににも まして

すばらしいこと として

 

 

こんな具合で、どの詩も、読むうちに何となく読者一人ひとりを肯定し、勇気づけてくれます。そして、普段詩には縁のない私のような人間にも、何か詩のようなものが書けそうな気にさせてくれます。104歳まで生きたまどさんのメッセージは、人生の指標となり、子どもから老人まで幅広い世代に読みつがれていきます。