わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか? 「カラスは飼えるか」(松原 始著、新潮社)

2020年12月28日

 

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カラスには朝の散歩道でよく出会います。山裾の林の中で、集団でカアカア、ガアガアと大きな声で鳴いていますし、ゴミの収集日には、ゴミステーションの周りに集まって来てゴミ袋を破って中身を食い散らかすので、住民からは嫌がられています。黒くて大きくて動作や声に可愛げがない。普段嫌われ者のこんなカラスを飼う人が本当にいるのだろうか? そんな気持で本書を読み始めました。

 

著者は動物行動学の研究者。1969年生まれと紹介してあるので、現在51歳。カラスの研究歴25年余り。研究者としては油がのってきた頃でしょう。本の1ページ目からカラスの行動についての解説があるのかとおもっていたら、まず出てきたのはサルの話。次にニワトリ。そしてタカ。なかなかカラスの話にならない。しかし、カラス以外の話題がなかなか面白い。そしてフクロウ、カササギ・・・。1章から4章まで、鳥の話を聞かせてもらって、かなり鳥好きになったところで、最終章でようやくカラス登場。この最終第5章「やっぱりカラスでしょ!」で、カラスの生態、行動などが、様々なエピソードを交えて紹介されます。やっぱり25年も研究していると、カラスへの深い理解と愛着が文章の中に滲んできます。

 

本書のタイトル「カラスは飼えるか」の設問に直接答える部分が第5章の最後の方に出てきます。野鳥は我が国の法律では基本、飼えないそうです。愛玩用の野鳥の捕獲は認めないという法律がある以上、カラスは飼えないわけです。それでもカラスを飼いたいと言う人向けに、カラスを飼うのはこんなに大変だと、愛情のこもった忠告の文章が続きます。

 

世の中に鳥の好きな人は結構います。朝の散歩道でもバードウォッチングの格好をした夫婦に出会うことがあります。彼等は多分、この地域のキジや渡り鳥をカメラや双眼鏡で追いかけていると思います。もし彼等が本書を読んだら、どこにでもいるカラスにも、ひょっとしたら深い愛情と注目をそ注ぐようになるかもしれません。それはわかりませんが、本書は確かにカラスを含めた鳥類一般への理解を大きく進めてくれる楽しい本です。