わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

こんな本読んだことありますか?   『吾輩も猫である』(赤川次郎、新井素子、石井衣良、荻原 浩、恩田 陸、原田マハ、村山由佳、山内マリコ著、新潮文庫)

2020年5月16日

 

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裏表紙カバーの「内容紹介」によると、夏目漱石没後100年&生誕150年記念出版だそうです。猫好き作家8名が漱石の「猫」に挑む!とあります。2018年新潮文庫の100冊に選ばれました。

 

どの作品も猫に対する愛情にあふれています。作家のスタイルがそれぞれ違うので、私のように現代の流行作家の本を普段あまり読まない者には、作家の個性を知るよい機会になります。短編なのですが、かなり心に残る作品もあります。猫そのものの物語、猫と飼い主の関係、猫よりむしろ飼い主の物語、など作品ごとに猫を捉える視点が様々なのが面白い。

 

赤川次郎。昔、若い作家だなあと思っていたら、私と同い年ですか。多くの作品を書いて、ずいぶん歳を重ねられたんですね。流れるような会話を中心につづられるストーリーにはやはり引き込まれます。

 

新井素子。SF作家。もうベテランでしょうね。登場する猫の名前が「バクテリオファージT4」。まるで分子生物学の世界です。文学なのに理系の、特に生物学の雰囲気があちこちに漂います。

 

石田衣良。この作家ももうベテラン。恋愛文学で売れっ子という私の認識で間違っていないでしょうか。実は私まだこの人の作品は(若者向きという気がして)読んだことがありません。以前テレビに出演していた時の印象は「かなり好感度」でした。

 

萩原 浩。この人も結構いい歳だなあ。作品は小説ではなく4コママンガ。これがとても面白い。何度読んでも笑ってしまう。それぞれの4コママンガの中に主役の猫の愛らしさが溢れています。ユーモアとウイット。この人のユーモア小説を是非読んでみたい。癒やされそうだ。ホラー作品もユーモア作品も書ける人のようです。

 

恩田 陸。この人もそれなりの年齢。長編小説「蜜蜂と遠雷」で評価されている。この人の作品はファンタジー、ミステリー、ホラーとかなり多面的らしいのですが、私はまだ彼女の作品をしっかり読んでいません。この猫の作品はちょっとミステリアスな雰囲気でした。

 

原田マハ。この人ももうベテランと呼べる年齢。ユーモラスな作風で私好みです。美術を題材にした最近の作品が有名。絵が好きな私としては、是非その作品を一通り読んでみたいと思っています。

 

村山由佳。この人も上の作家達と同じような年齢層に属している。恋愛文学でかなり注目されているという評価で正しいでしょうか? 私のような高齢者が読む作品ではないと思って、彼女の作品も読んでいません。ただ、先日NHKテレビでこの作家と猫との生活が取り上げられていて興味を持ちました。今回紹介している『吾輩も猫である』を読むきっかけは、実は村山さんの猫との関わりを描いた作品がここに収められていたからでした。期待通り、この8つの作品の中で、もっとも印象に残ったのは村山さんの作品でした。また彼女の猫を扱った本格的な作品を読んでみたいと思いました。

 

山内マリコ。8人の作家の中では一番若い。この猫の作品は、若い女性の感性を感じさせる作風です。猫と接する若い世代の人達の暮らしや人生観みたいなものが伝わってきます。

 

同じ猫を描くにもこんなに違う描き方がある。これは絵の世界と同じです。作家の個性が出る。本を読む。絵を見る。それによって、作者に近づき、作者を知る。これはとても豊かな時間の過ごし方だとしみじみ思います。