わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

新型コロナウイルス・パンデミックが世界のエネルギーの見通しを混乱させている中で、再生可能エネルギーが勢いを増している (Renewable power surges as pandemic scrambles global energy outlook, new report finds, by Warren Cornsall, Science doc:10:1126/science.abc5463を読んで)

パンデミックで引き起こされた世界規模の経済のメルトダウンが、エネルギー需要の減少とそれと関連する二酸化炭素の放出の減少を起こしています。今後、パンデミックが終息した時に、世界のエネルギーの利用方法が変わる可能性がある、と国際エネルギー機関(Internatinal Energy Agency: IEA)が報告しています。

 

今回のようなエネルギー利用の急激な低下は、1930年代の大恐慌以来、例を見ないものです。しかし全てのエネルギー源が同じように悪影響を受けているわけではありません。石炭や石油のような化石燃料の利用が減少する代わりに、再生可能エネルギーへのシフトが進んでいます。

 

2020年の世界のエネルギー需要は、前年に比べて6%減少すると予想されています。先進経済大国でこの減少幅が大きく、米国で9%、EUで11%の減少です。これに伴って、2020年には二酸化炭素放出は26億トン減る予想です。一方、再生可能エネルギーの需要は、再生可能電力の使用量が5%増加することに牽引されて、年間で1%増加すると期待されています。これは、風力、太陽光、水力発電で発電する経費が安いことに起因しています。

 

今回最も影響を受けているのが石炭です。2019年の年始めに比べて2020年の第一四半期は8%の需要減少となりました。石炭を大量に消費する中国のロックダウン、安い天然ガスとの競合、そして温暖な冬などがこの減少の主な要因です。

石油の需要も車の交通量の減少、航空輸送の60%カットなどが原因でこの3月末までに5%減少しました。これに比べて、再生可エネルギーは今年の初めの3ヶ月で1.5%増加しました。

 

化石燃料(石炭・石油)は大規模な貯蔵や輸送が必要なことから、新型コロナウイルスの流行下では供給が止まります。また、パンデミックの下では、新規の再生可能エネルギープロジェクトさえも、関連施設の建設が危ぶまれています。

 

このパンデミックが終息し、経済が復活する時、ふたたび二酸化炭素の放出が増えると思われますが、これを機会に、世界各国の政府が経済復活の中心にクリーンエネルギー・テクノロジーを据えてほしいと訴える人もいます。実際、いくつかの国ではそのような動きがあります。韓国は、その経済プランとしてクリーンエネルギーへの投資を呼びかけました。ドイツや英国も同様です。コロナ危機の結果、きれいな空気や環境が戻ってくるかもしれません。コロナ後は、「わあ、昔はこんなにひどい環境にいたんだ」と人々が言えるような状態になるかもしれないのです。

 

以上がこのレポートの要点です。パンデミックの下では、食糧の輸送がネックとなって食糧危機が起きかねないという話を前回紹介しましたが、エネルギーでも問題は同じようです。いろいろなところでグローバル経済の見直しが迫られているということでしょうか。我が国のように、石炭も石油も外国からの輸入に大きく依存しているところでは、太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーの利用にシフトすることが基本的に大事であることを、このコロナ危機が教えてくれます。できるだけ自国で自力でエネルギーを確保する。エネルギーの地産地消がもっと進めばいいと思います。

 

 

f:id:yaswatercolor:20200509144738j:plain