わたしの水彩スケッチと読書の旅

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こんなこと知ってますか? 大気中の二酸化炭素濃度

2019年11月7日

 

地球温暖化の原因とされる大気中の二酸化炭素濃度は現在、420ppmです。Ppmは物質の濃度の単位で、parts per million (100万個の中に何個あるか)を示します。420ppmは420/1000,000ということになり、これをよく使う%(百分率)に換算すると0.042%となります。地球上では、最近毎年2〜3ppmの割合で急速に二酸化炭素濃度が増加しています。このまま何も対策をとらないでいると、今世紀末(2100年)には、二酸化炭素濃度は 3ppm/年 x 80年 = 240ppmとなり(1年に3ppmの割合で二酸化炭素の増加し、今後80年続くと仮定する)、これまでの蓄積量である420ppmと足し合わせると、660ppmとなります。IPCC気候変動に関する政府間パネル)の試算では、最悪の場合、2,100年に936ppmになると予想しています。1,000ppmに達する二酸化炭素濃度は、今から7,000万年前の中生代白亜紀(大型爬虫類が地上を闊歩(かっぽ)していた時代)以来の出来事で、そのころ地上にはまだ現れていなかった私達原生人類(ホモ・サピエンス)にとっては未だ経験したことのない領域です。私達は極めて近い将来にその「未経験領域」に踏み込もうとしています。

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Taiz/Zeiger Plant Physiology Fifth editionより改変

 

ではどうしてこんなことになったのか。それは今から270年位前の18世紀半ば、つまり1750年頃、イギリスで産業革命が起こったためでした。ジェームズ・ワットにより実用化された蒸気機関を使って、1830年代にはスティブンソンが蒸気機関車を製作し、マンチェスターリバプール間に鉄道が敷かれて蒸気機関車が走り始めました。それ以来石炭と鉄鋼を中心とする近代工業が発達しました。イギリスの産業革命は、やがてベルギー、フランス、ドイツなどヨーロッパ各国に広がり、アメリカ、ロシアにも波及しました。1868年に明治維新を迎えた日本にもイギリスから約100年遅れて近代工業化の波が来ました。それまではずっと二酸化炭素濃度は270〜280ppmに維持されて、長い間濃度に大きな変化はありませんでした。しかし、この産業革命以来、石炭を、続いて石油をエネルギーに使う工業化が大きく広がり、地球の大気中の二酸化炭素は140〜150ppmも増え、それに伴って、18世紀半ばに比べてこれまでに地上平均気温が1℃上昇しました。

 

思い返せば、私が小学生や中学生だった昭和30年代は、学校の暖房はすべて石炭ストーブでした。当番の生徒が毎朝交代で学校の石炭置き場に暖房用の石炭を取りに行き、教室のストーブに新聞紙で火をつけて石炭をくべて暖房の準備をしました。私が生まれ育った山陰地方では、鉄道を走っていたのはずっと蒸気機関車でした。大学に行くころもまだ蒸気機関車でした。蒸気機関車の煙突から飛んだ火の粉が原因(と言われている)で市域の大部分が燃えた鳥取市の大火も経験しました(1952年4月)。しかし、日本の炭鉱(北海道の石狩炭田や北九州の筑豊炭田など各地にあった)での石炭生産は次々と中止となり、今は石炭の殆どを(オーストラリアなどからの)輸入に頼っています。原油も完全に輸入です。従って日本で稼働している火力発電所は、その燃料である石炭も石油も完全に外国からの輸入に依存しています。

 

さて、地上平均気温はこれから21世紀末にかけて更に大きく増加する見込みです(0.5〜4℃)。たとえ二酸化炭素排出を世界中でゼロにできたとしても、しばらくは二酸化炭素濃度は上がり続けるようです。地球表面温度の上昇は、地球上の各地で異常気象を引き起こします。最近は特に世界中で夏の暑さが厳しくなり、熱中症の死者が増加しています。四季がはっきりしていた日本でも、春と秋が短くなり、今年の台風19号のような巨大台風(スーパータイフーン)が発生し、集中豪雨で川が氾濫し、土砂崩れが頻発しています。

 

大気中の二酸化炭素濃度が増えるとなぜ気温があがるのか。それは二酸化炭素が「温室効果」をもち、地球の熱を逃しにくくするためです(つづく)。

 

参考資料