わたしの水彩スケッチと読書の旅

どこまでも、のんびり思索の旅です

直島は 人気で何かを 失って  香川県香川郡直島町

2019年4月


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ほぼ5年ぶりに、瀬戸内国際芸術祭開催を明日(4月26日)に控えた直島にやってきました。 直島行きのフェリーが出る宇野港へは、JR瀬戸大橋線宇野線を使って行きますが、両線は今や国際観光線という雰囲気を漂わせています。JR岡山駅のホームには瀬戸内海の島々を訪れる外国人観光客が多数見られました
。今年のニューヨークタイムズ紙が選んだ「2019年に訪れるべき世界の52の場所」に、日本からは唯一「瀬戸内海の島々」が選ばれました。瀬戸内国際芸術祭も、この地域の観光資源の一つとして大いに注目されています。
 
そんなこともあって、今回、グループのスケッチ会で芸術祭の主会場である直島を描くことにしました。天気は幸い曇り時々晴れ。今日は芸術祭の開催前なのに、大型フェリーには順番待ちの長い列ができました。


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直島の宮浦港へ久しぶりに来てみて感じたことは、島が芸術祭でなかば「テーマパーク」のようになっていて、私達が期待している昔ながらの島の生活が感じられるような景色が少なくなっているということでした。島の古い通りに面した家屋も、昔ながらのものはどんどん壊されて新しくなり、道路も新しくなり、絵のモチーフを探すのが難しく感じられます、草間彌生さんの作品である「赤かぼちゃ」の屋外展示などで、「芸術祭の島」のイメージはおおいに高まっていますが、逆に、それらの展示物の雰囲気に圧倒されて、私達が探している本来の「素朴な島の生活の場所」が見つけにくくなっている気がしました(直島の宮浦港以外の地域のことは分かりません)。
 
今日は、フェリー乗り場の前に建っている古い家屋をスケッチしました。この家もいつ取り壊されて新しくなるかわからないという、私自身が感じた危機感からここをスケッチすることにしました。「この家やその周辺の古い家並みが壊されたときは、真の芸術愛好家がこの島を見放すときだ」というぐらいの強いメッセージを絵に込めたいと思います。もう一つ苦言を呈すると、このフェリー乗り場の近くの騒音がひどい。今日はヘリコプターが空を飛んで、道路を頻繁に大型のトレーラーが走り(昔、アメリカのハイウエイでみた大型トレーラーと全く同じタイプです。今、日本でもあんなのが走っているんですね)、国際芸術祭の準備なのか工事の車両の出す騒音がすごい! スケッチしながら、季節はずれの暑さとこの騒音で、スケッチするのが嫌になりました。瀬戸内の静かな島の生活を見ることを期待してきた観光客には、ちょっと期待はずれでしょう。
 
今日の参加者は13名でしたが、こんななかで「どこを描いていいかわからない」という意見を述べる人が少なくありませんでした。瀬戸内の島でゆっくりスケッチするなら、芸術祭開催地以外の島に行くか、冬など芸術祭の期間以外の静かな時期にこれらの島を訪れることをおすすめします。例えば、前に訪れた笠岡諸島の真鍋島(岡山県)などは、実に静かで雰囲気のいい島でした。波打ちぎわの波の音も心地よく聞こえました。スケッチファンにはおすすめです。


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スケッチも、いつも理想的な場所で描けるとは限りません。その場所その場所の事情や現実の姿を知って学ぶことも、スケッチをする楽しみにしたいと思います。
 
モンバル・キャンソン水彩紙 中目 F10
青墨筆ペン
シュミンケ固形水彩絵の具
所要時間:3時間



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